うなぎの寝床×古橋織布×HUIS
産地コラボレーションが生み出す【遠州織物もんぺ】
2017年名古屋で開催された『MONPE博覧会』をきっかけに生まれた【遠州織物もんぺ】。
九州ちくごを拠点に活動する「うなぎの寝床」のもんぺと、遠州織物を用いたブランド「HUIS」のコラボレーションによって生まれたもんぺが、2年の時を経て今年再リリースされました。その生地には、遠州を代表する「古橋織布」が旧式のシャトル織機で生み出す、特別な生地が用いられています。
3者のコラボレーションによって新たに生まれた【遠州織物もんぺ】。その開発の経緯とともに、3者のものづくりの想いにせまります。
富永(うなぎの寝床・役員) / 濵田(古橋織布・企画営業) / 松下(HUIS・代表)
第2回 生地産地・遠州にはどんな特徴が?
富永(う)
遠州って高級シャツ生地の産地っていうイメージがありますが、産地の特徴ってどんなところなんでしょう?
濵田(古)遠州の特徴は、機屋さんごとに様々な特徴のある生地を生産していることだと思います。いずれも高級生地と言われるものが多いですが、産地としてみなが同じようなものを作るのではなく、それぞれの機屋さんが他とは違う個性的な生地を織っています。
松下(H)私たちも、遠州がこうした生地の産地だということはブランドをはじめる少し前に知ったことでした。
富永(う)地元の人たちには、こうした高級生地の産地だってことは知られていないんですか?
濵田(古)
知っている方は少ないと思います。遠州織物という言葉もまだまだ馴染みがないですよね。
松下(H)
自分たちくらいの世代では、遠州が繊維の産地ということを知らない方がほとんどです。ただ、年配の方と話をするとやはり繊維業が好景気だった頃の話はよく覚えていらっしゃいます。
濵田(古)
品質の高さから、それだけ需要があったんですよね。でも近年は海外から安価な生地が輸入されるようになり、アパレルのファストファッション化などの流れもあって生産量は以前と比べるとかなり少なくなっています。国内の他の産地も、同じような課題を抱えていると思いますが…
富永(う)
遠州のいろいろなところで使われている生地を見ると、細番手でしっかりとしているという印象があります。でも、高密度な生地ばかりというわけではないのですか?
濵田(古)
そうですね、いろいろです。例えば中にはシャツ生地を全く織っていない機屋さんもいますよ、バッグの生地とか。コットンの産地って言われていますが、リネンを織っている機屋さんも多いですし。そういえば、じつは遠州はリネンの生地生産量日本一の産地と言われているそうですよ。
富永(う)
あ、そうなんですか?
濵田(古)
コットンの方が量としてはもちろん多いのですが、全国的にリネンは少ないので。滋賀県などがリネンの産地として知られていますが、生産量としては実は遠州は非常に多いんです。
松下(H)
それだけ産地全体として現在も生産量のある産地ということも言えると思います。たしかに、古橋さんでもリネン混の生地はいくつか作られていますよね。HUISのアイテムにも使わせていただいています。
濵田(古)
遠州では綿を使った難しい企画の高級生地を織れる技術が昔から根付いていたので、リネンを使った織物にも対応することができるんです。それだけの技術が継承されているというのが、遠州の特徴だと思います。
富永(う)
なるほど。それでは、古橋さんを伝える時には、そんな技術が根付いている遠州の中で、「高密度な生地を作ることに特化した機屋さん」という表現がより正しいですね。そして、その中でもシャトル織機を使って生産されている。「遠州織物」って調べても、「多様性」ってこと以外なかなか出てこなかったんですが、話を聞いてみてよく分かりました。
松下(H)
産地の情報って、なかなか得ようとしても豊富にあるわけではないですもんね。
富永(う)
そうなんです。
松下(H)
古橋織布さんが使われているシャトル織機は、近代の織機と比べて織るのに非常に時間がかかります。決して効率よく生産できる機械ではありませんが、シャトル織機だから生み出せる特別な風合いを守るために、今でも使い続けられている。それがすごいことだと思います。
濵田(古)
よろしければ工場のほう、ご案内しますよ。
濵田(古)
この地域ではみんなそれぞれに違う生地を織ってるから、機屋さんごとにライバル意識って実はそんなにないんですよ。おもしろいことに。
富永(う)
そうか、全然違う生地を織ってるから競合しないんだ。
濵田(古)
販売先も違いますしね。他の機屋さんの生地を見たところで、うちで織れるわけでもないしとか、織れたとしても織りたいわけでもないし、みたいな(笑)。
富永(う)
それはおもしろい(笑)。しかし、やはり20台のシャトル織機が稼働しているというのはすごいです。織り機としては何年前くらいのものなんですか?
濵田(古)
昭和40年代前半のものが一番古いものですが、型としては、ここにあるもの20台全て一緒です。
富永(う)
その頃の織機は、この地域ではまだ作られているんですか?
濵田(古)
いえ、40年くらい前にシャトル織機自体が製造中止になっているので。もう手に入らないんです。弊社で使っている型が、当時製造していたメーカーで製造した最後の型式です。
松下(H)
これだけ特別な生地を生み出すことができるのですが、使い続けるためには、直し続けるしかないんですよね。ただ、修理のできる職人さんも高齢化していると聞いています。
濵田(古)
そう、70〜80代の方が多いですね。ですから、うちでもメンテナンスはかなり綿密に行なっています。部品もふつうに手に入らないものも多いので、廃業された機屋さんから部品取りをしたり。
富永(う)
その辺は、久留米絣と一緒ですね。廃業されたって聞くと、みんなこぞって。
松下(H)
なるほど、やっぱりどこでもそうなんですね。
濵田(古)
廃業されると、ふつうは海外に二束三文で流れてしまうんです。シャトル織機は扱える技術もないと、なかなかこうした風合いの生地が織れるわけではないんですけど。
松下(H)
日本で生まれた貴重な機械が、そうして流れていってしまうのはすごく切ないことですよね。
(
第3話につづきます)
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■うなぎの寝床
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■古橋織布
http://www.furuhashi-weaving.jp/
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