2023年もスタートしてはや1ヶ月が過ぎ、2月を迎えました。
いよいよHUISの2023SS新商品も少しずつリリースがはじまっています。
昨年も1年間、さまざまな地域でのイベント開催を続けてきました。そうした場で新たにHUISや遠州織物のことを知ってくださった方、またウェブ上やSNS上で知ってくださった方もおられると思います。そうしたみなさんに向けて、今日はあらためてお伝えできればと思います。
ご存知の通り、HUISは「遠州織物」という生地を使ったブランドです。「遠州織物」は、遠州という歴史ある繊維産地で生まれる生地のことを指しますが、多くのお客さまにとって、アパレル・ファッションにおけるこの“産地”という言葉はあまり馴染みのなかったことではないかと思います。
そうした意味で、HUISのことを知ることが、服選びの楽しみ方が新たに広がるきっかけになった、というお声もいただくようになってきました。それは、私たちにとってもすごく嬉しいことです。
こうした“繊維産地”というものは、地域ごとの特色を活かし長い年月を経て技術が育まれてきたものです。そして日本国内の繊維産地は多くが、世界的に極めて価値の高い技術をもつ産地です。
本来、農産物や水産物とまったく同じように、産地の情報が価値の裏付けとなって流通するのが自然なことなはず。ですが、アパレル業界のさまざまな要因の中で、産地というものの情報はこれまでお客さまに知られることがありませんでした。むしろ、“産地”という概念を新鮮に感じる方が多いのではないでしょうか。それほど、アパレルにおける生地の流通というものが、特殊性を帯びてきた歴史を感じています。
今回は私たちが考えるその理由を、HUISのことを少し振り返りながらお伝えできればと思います。
まずは、私たちが住む遠州という産地についてあらためて。
遠州は、主に綿(コットン)生地の産地で、シャツ生地などの洋服の生地が作られています。単にシャツ生地、というわけではなく、限られた国内外のハイブランドなどが使ういわゆる“超高級生地”が作られています。高級生地に特化したアパレル向けの綿織物の産地、が遠州産地です。ちなみに、今は麻(リネン)織物も多く作られています。
では高級生地とはどんな生地でどんな特別さがあるのか?
細番手&高密度生地を作ることができるのが遠州の技術であり、特に織機の中で最も古い織機『旧式のシャトル織機』が、国内で最も多く残る産地です。
機織りの世界は、古い織機になればなるほど扱いは難しく、技術が必要になります。一方、旧式の織機で低速に織れば織るほど、糸に遊びのある状態で柔らかく織り上げていくため、抜群の着心地と風合い、その他機能性が生まれます。
そして、糸は細番手になればなるほど、かつ、高密度になればなるほど、織るのは難しくなります。
つまり、旧式のシャトル織機を使い、細番手&高密度の生地を織るのが最も難しい生地なのです。この大変難しい規格の生地を、最高級の糸を使って織るのが遠州織物の特徴です。まさに綱渡りのような生地です。こうした技術があることから、織るのが難しい麻(リネン)織物も現在たくさん織られるようになりました。
ですが、BtoBに特化して流通する中間材であるところの「遠州織物」は、一般の方にほとんど知られることがありません。今は規模も急激に縮小し、特別な技術を持った機屋さんだけが残っている産地です。
実は、遠州に住む地元の人も「遠州織物」がどんな生地なのか、どれほど価値のある生地なのか、知っている方はほとんどいません。恥ずかしながら私たち自身も、HUISを通して産地の方々と関わる以前は、「遠州織物」の価値を知ることがありませんでした。
今の若い方だけでなく、ご年配と言われる世代の方まで知らないのです。そして、今にも消えて無くなってしまいそうな規模に縮小しています。過去には1000軒以上あった遠州の機屋さんは現在数十軒。2022年にも多くの機屋さんが廃業されました。おそらく、今、学校に通うような地域の子どもたちにも、このままでは知られることはなく産地自体が消滅してしまうでしょう。
そういう中で、遠州に残る貴重な織機、機織り職人さんたちの他にはない技術、そして遠州織物の価値を、洋服というものづくりを通してお伝えしているのが「産地発ブランド」としてのHUISの役割だと思っています。
(明日の投稿に続きます)