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お伝えしたいこと遠州織物のこと 2022-05-30

シャトル織機で織る、「本物」のタイプライタークロス

2022年の春夏物も多くのアイテムが出揃ってきましたが、5月後半に入りやっとHUISの「タイプライタークロス」の生地のアイテムをリリースすることができました。

こちらのタイプライタークロスは特に、織り上がるまでに大変な時間がかかる生地のためどうしても生産量に限りがあり、安定供給が難しい生地でもあります。

みなさんがセレクトショップなどに訪れると、この「タイプライタークロス」という名称のついた生地の洋服をご覧になることがあるかもしれません。しかし、よく見るこうした現代の高速型織機で織られる一般的なタイプライタークロスと、HUISの使用するタイプライタークロスは、全く異なる生地です。

旧式のシャトル織機で織る「“本物”のタイプライタークロス」がいかに特別な生地か、今回はじっくりとお伝えしたいと思います。

 

「タイプライター」は文字を印字する機械ですが、これに使用する紙のように薄く、目の詰まった織物であることが名称の由来と言われます。または、タイプライターの印字リボンに使用されていた、との説もあります。
いずれも、薄手で丈夫な超高密度生地であることから、まるで紙のような質感と表現される生地がタイプライタークロスです。

規格としては細い番手の糸を高密度に織った生地で、その密度から独特なハリ感が生まれます。
現代の織機で織ったタイプライター生地は、糸のテンションを強く張った状態で超高速に織り上げるため、短時間で多くの生地を織ることができますが、どうしてもハリ感とともに堅さのある生地となり、“着心地の良さ”からは遠ざかってしまいます。

一方、HUISのタイプライタークロスを実際に触れた時、このハリ感とともに「しなやかさ」「柔らかさ」といった、通常ハリ感とは相反する不思議な質感を感じることができると思います。これは、旧式のシャトル織機で織ることで、はじめて生まれる不思議で特別な感触です。

織物はタテ糸を上下に開き、その間にヨコ糸を通して織ります。

シャトル織機で織るHUISの生地は、上糸(上側の糸)を限界まで緩めてゆっくりとシャトルを通し、ヨコ糸を包み込むように織っていきます。また、シャトル織機はその特性上タテ糸の開口が大きく、タテ糸が大きくくねらせながら生地を織り上げていくため、生地が立体的になり、ふっくらとした生地に織り上がります。

糸に遊びを持たせた状態で、かつ、ゆっくりと超高密度に織ることで、はじめてこうした特別な質感を持ったタイプライタークロスが生まれるのです。

シャトル織機は、様々な部品がネジで止まっているため細部まで微調整することができますが、その加減はマニュアル化できるものではなく、職人の感覚で微調整が重ねられます。
最高の生地が織り上がるか、そうでないかは背中合わせ。職人の技術がダイレクトに生地品質に反映される、難度の高い織機でもあるのです。


この織機のセッティングが完璧に決まってはじめて、現代の織機の限界と比べて、数段高い密度の織物を織ることができます。

貴重な旧式のシャトル織機と、それを扱う遠州の機織り職人の至高の技術が融合して、はじめてこの「“本物”のタイプライタークロス」が生まれるのです。

こうして織られたタイプライタークロスには、もうひとつ特別な特徴があります。

HUISのタイプライターの服を手に持ってもらった時に感じる“パリッ”とした「触感」の次に、“シャカシャカッ”という「音」をぜひ体感ください。
細番手の糸を、限界を超える超高密度で織り上げると、甲高い布ズレ音を発生させます。服を着て動くたびにシャカシャカという音を奏で、布を纏っている感覚が生まれます。

糸量と時間を贅沢に使った最高のタイプライタークロスだけが持つ、この特別な感覚をぜひ体感いただきたいと思います。

冒頭でもお伝えしたように「タイプライタークロス」という名称で世間に販売されている洋服の中に、このシャトル織機で織られた「“本物”のタイプライタークロス」は、現代ではほとんどなくなってしまいました。

そして残念ながら、その明確な違いを店頭で判別するのは、簡単ではなくなっています。
昔の良い生地に近づけるため、現代ではさまざまな加工の技術が発展しているため、店頭でその肌触りだけを比べても明確な違いを感じにくいのが実際のところです。

ですが、その違いは、洗濯をした後にはっきりと現れていきます。
水を通して洗いをかけていくと、生地の表面に施した加工は落ち、柔らかさは失われます。
一方、シャトル織機で糸に負担をかけず、ふっくらとやわらかく織った生地は、洗いをかけるほどに一層風合いが増していきます。

本当に良い生地は、水を通すと分かる、と言われるひとつの理由です。

現代では希少となったシャトル織機。
織り上がるまでには途方もない時間がかかる非効率的な織機のため、多くの製品を作ることができませんが、それだけ特別な生地が生まれます。

遠州の至高の技術が生み出す「“本物”のタイプライタークロス」の春夏アイテム。
ぜひ味わってみてくださいね。

 

■HUIS onlinestore
https://1-huis.stores.jp

 

@kanetaorimono

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