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お伝えしたいこと遠州織物のこと 2022-11-18

“孤高の生地「シャトルコーデュロイ」、その希少性”

2022AWシーズンも、シャトルコーデュロイを使ったアイテムが出揃いました。
細畝&太畝コーデュロイに加え、昨年からはより繊細な織布技術の詰まった「みじんコール」も豊富に揃っています。

現在リリースしている秋冬アイテムに使われているこれらHUISのコーデュロイ生地は、昨年秋から実に6ヶ月間という長い時間をかけて織り続けてきた生地です。これほどの途方もない時間をかけて織られる「シャトルコーデュロイ」の特別さについて、今日はあらためてご紹介させていただきたいと思います。

生地表面に畝(うね)があり保温性のある秋冬向きの素材「コーデュロイ」は、みなさん現在でもさまざまなお店で見ることがあると思います。
ですが、世間で見るコーデュロイ生地のほとんどすべてが海外で作られたものであることをご存知でしょうか?その多くはコーデュロイ生産の一大産地国である中国産のもの。一方、高級コーデュロイ生地の産地として知られている日本産の国内流通シェアは1%未満と言われています。
製品表示タグに「日本製/made in japan」と記載されていても、これは縫製国だけを示しているため、私たちが売り場で見るコーデュロイ生地のほとんどは海外産のものです。

シャツ生地なども同様ですが、海外産のコーデュロイ生地の特徴は、最新型の超高速型織機で織られたものがその多くである点です。発展したテクノロジーを基に開発される織機は生産効率に長け、多くの生地を安価に生産することができます。
他の生地と比べカッチングや毛焼きといった数多くの工程を必要とするコーデュロイ生地をも、安くたくさん流通させられるようになったのはそのおかげであるとも言えます。

一方、効率性を優先する生地の多くは超高速&低密度で織られることから、畝を持つコーデュロイの場合はパイル保持率が低く、相対的に「抜け」や「はげ」が起こりやすい生地になってしまいます。近年コーデュロイが消耗品だといわれるようになったひとつの原因です。
そのため、これを防ぐためのパイル保持剤という樹脂で補うことになり、生地本来の風合いからは遠ざかってしまいます。硬さを感じるコーデュロイ生地の要因の一つには、こうしたものもあります。

対して、ヴィンテージショップや古着屋さんなどに並ぶコーデュロイ製品は、長く使うことができる価値の高いコーデュロイが多いと言われています。それはなぜか?
古い時代の織機でゆっくりと時間をかけて織った高密度の生地は堅牢度が高く、同時にやわらかな風合いを持つからです(中でもシャトル織機でおられた生地は使い込むほどに生地が育つ、と言われる特別な価値を持ちます)。「別珍(べっちん)」「コール天(こーるてん)」という名称で呼ばれていた頃の高級コーデュロイ素材です。

そうした高級コーディロイを今なお現役で生産しているのが、日本国内で唯一のコーデュロイ産地である「遠州」です。昔ながらの非効率な織機を使ってゆっくりと織られ、産地で受け継がれた職人の技術が詰まった高品質な生地として、主に高級ブランド向けの生地として使われています。

ただ、コーデュロイ生地は生地表面にループを作って織る専門的な織り方であり、さらに織り上げた後「カッチング」と言われるループひとつひとつを切断する工程を必要とします。この「カッチング」にも熟練した職人の技術が必要となるため、コーデュロイ生地の産地を維持するためには、大変な苦労があります。日本国内で、遠州以外にコーデュロイ産地が残っていない大きな理由のひとつです。現在、残っているカッチング職人さんは産地の中でも数人と言われています。その他機織りに関わる多くの職人さんも高齢化し、後継者不足の課題を常に抱えています。

話が逸れてしまいましたが、こうした伝統ある技術を持つ遠州産地の中でも、最も古い織機である「シャトル織機」を使ってコーデュロイを織る機織り工場は“1件のみ”しか残されていません。HUISが使わせていただいているコーデュロイ生地は、世界的に見ても特に希少な生地です。

シャトル織機はタテ糸を大きく開口させてシャトルを運ぶため、表面に立体感のある豊かな風合いが生まれます。温かみのある風合いは、コーデュロイの素材感を一層引き立ててくれます。また、時間と糸量を贅沢に使った高密度のシャトルコーデュロイは、高い耐久性を持ち、美しい毛並みが保たれます。光沢のある高級糸がビッシリと織り込まれて立つ畝は高級感を持ち、まさに「風格のあるコーデュロイ」となります。

今は織機1台で1日に数百メートルという生地が作れる時代になりましたが、HUISのシャトルコーデュロイが織れるのは丸1日織り続けてたったの10mです。半年間という長い時間をかけて織り続けてきた、遠州の職人さんたちの誇りの詰まった「シャトルコーデュロイ」。

いつまで使い続けることができるか今はわかりませんが、その特別な価値とともに、たくさんの方に届けていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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