今シーズンもHUISの【シャトルコーデュロイ】のアイテムをリリースすることができました。
畝の光沢感、既存のコーデュロイの概念を覆す軽やかさとしなやかさで、例年、リリースするやいなや売り切れてしまうほど、HUISの秋冬の代表的なアイテムとなっています。
特に、今秋はコーデュロイの加工場・磐田産業さん、カッチング職人・カネタカ石田さんを動画でご紹介させていただきましたが、店頭でも日本のコーデュロイの希少性を初めて知ったとお話ししてくださる方も多くおられます。
時間をかけて関係者のみなさんと制作をしてきた取材動画をご覧いただけていることをとても嬉しく思います。
今回は、コーデュロイ生地の生産に不可欠な工程「カッチング」について、あらためて記事で解説させていただければと思います。
コーデュロイが一般的な生地と異なる大きな点は“生地表面に畝(うね)を持っていること”です。
この畝が空気を暖かな含むことで保温性をもつ秋冬シーズンに適した生地で、さらに柔らかな手触りと暖かな質感、光の当たり具合によって生まれる光沢感などが特徴です。
実はこの畝も、職人さんの手仕事によってつくられています。
畝ひとつひとつに針を刺して糸を拾い、カッターで糸をカットしていくのですが、このカットする工程を産地ならではの独特の呼び方で「カッチング」と呼んでいます。
■カッチングとは?
カッチングとは簡単に言うと、緯糸をカッターで切っていく工程です。
緯糸はアーチ状に織り込まれたパイルになっています。
ふわふわとしたタオルを思い浮かべてみると分かりやすいと思います。
よくみると、一本一本糸がループ状にふわっと飛び出ていますよね。
カッチング前のコーデュロイ生地は、タオルのパイルのもっと短いものが、まっすぐ整然ときちっとトンネルのようにそろっている状態。カッチングでは、そのトンネル状の糸を先端をカットしていきます。
簡単そうに聞こえるかもしれませんが、生地とカッターの距離を1mm以下で調整する緻密な作業で、一度切った緯糸は決して元に戻すことができません。
鋭利なカッターを扱うことから、ちょっとしたミスから生地に傷をつけてしまう危険と常に隣り合わせ。温度や湿度で生地の状態が変化することから、その日その時の調整が必要になる職人技術。決して失敗は許されず、一瞬の気も抜けない、非常にシビアな工程です。
■手作業で針を指す
このトンネル状の緯パイル糸をカットしていくために、ニードル(針)とカッターを用います。
ニードルですくった緯パイル糸を円形状のカッターで切っていくため、ニードルは「ガイドニードル」と呼ばれています。
ガイドニードルで緯パイル糸をすくうと、ガイドニードルと連動したカッターが回転しパイルが切れて畝ができていくのですが、このガイドニードルを通す作業は、人の手で行う必要があります。
コーデュロイの畝、一本一本にガイドニードルを通していくのです。
例えば、HUISの「シャトルコーデュロイ・極太畝」は幅110メートルに400本。
HUISのシャトルコーデュロイを織っていただいているカネタ織物さん曰く、世界一細い糸で織られた「みじんコール」だと、1120本。この量だと機械を一度動かすだけでは切れないので、2回に分けて切るそうです。
これら全てのガイドニードルを手作業で差し込んでいるのです。
■職人の触感
ガイドニードルとカッターという一見簡易な工程にも思われがちですが、新しい企画の生地をカッチングする際には、畝の本数に合わせてガイドニードルやカッターを職人自ら用意します。生地の組織や糸に合うようにガイドニードル先端の曲げ具合や丸みの形状を加工、試作を繰り返すそうです。
また、コーデュロイの糸も、綿・リネン・ウールと様々な糸を用いているため、使い続ければカッターの切れ味は落ちていきます。
切れ味が悪くなると断面が荒れ、きれいな畝になりません。
そうなる前に一枚一枚手作業でカッターも磨きますし、地切れ(生地自体を切ってしまう傷)に直結しやすいガイドニードルの先端も定期的に一本一本研ぎ直します。
さらに、緯パイル糸を均等に切っていくために適度な生地の張りが必要ですが、気温や湿度の変化で生地の調子も変わってくるため、1日の中でも生地の張り方、ガイドニードルの差し方に常に気を払って調整します。
これらの作業工程に、マニュアルはありません。
全て、職人の長年の経験と感覚によるもの。
指先のちょっとした違和感から、その時の気候条件と目の前の生地に合う最適解を瞬時に導き出していきます。
■風格ある美しい畝を生み出す、遠州ならではの技術
カッチングで緯パイル糸を切っただけでは、あの美しい畝はできません。
カッチングの後、畝を立てるためにブラシやウインスなどによって糸を立て、「毛焼き」工程で表面の不要な毛羽を焼き、さらに大量の水で生地を幾度も揉み洗う遠州ならではの工程「揉み込み」を経て、ようやく染色工程へと生地を送ることができます。
こういった他の生地には無い手間がコーデュロイの特徴。
それだけに、特別な風格のある生地となるのです。
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高品質な“遠州織物”を使用したシンプルな衣服。
ふくふくとした豊かな生地の風合いを大切に。
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