ブログ

お伝えしたいこと 2025-01-07

どうして地元で知られていないのか?-遠州織物の本質的価値-

昨年末に登壇させていただいた地元でのトークイベント「水曜のヨル喫茶」。

経営者、地元企業・行政の方、議員さん、若い学生さんなど色々なみなさんに参加していただきとても楽しい時間を過ごせた一方で、改めて感じたのが「遠州織物」がいかにこの遠州でまだ知られていないか、ということでした。

遠州に住む方の中でもとりわけ感度の高い方が参加してくださったイベントであった実感がありますが、冒頭で遠州織物のことを知っている方がどのくらいいるのかお尋ねした際に、
『名前だけは知っているがどんなものか知らない』という方が半分程度。
『全く知らない』という方も多く、『遠州織物のことを知っている』という方はほとんどいませんでした。
そんなわけでイベント前半は「遠州織物の本質的価値」というテーマでお話しさせていただいたのですが、その一部をご紹介したいと思います。

 

 

 

【遠州織物】とは1997年に地域団体商標も取得している言葉で遠州産地で織られた生地のことを指しますが、【遠州織物】という言葉だけを聞いてしまうと「伝統的な和風の生地」というイメージを持たれがちです。

これは、織物産地は和服の織物産地が多く知られている、ということにも起因していてそうしたイメージの生地が頭に浮かぶのはごく自然なことです。(なぜ和服の生地産地が知られ、洋服の生地産地は知られにくいのか、という理由についてはまた後日解説させていただきたいと思います)

遠州は多様な織物が織られている産地で実際こうした和服用の生地=小幅織物も織られていますが、一方、業界内で認識されている特徴はアパレル用の「高級綿ローン生地」「高級綿ブロード生地」の産地=遠州織物になります。

ここで、「高級綿ローン生地」「高級綿ブロード生地」という生地がどんなものなのかが、実際なかなかピンと来づらいと思います。
細番手の高級綿糸を高密度で織った生地がこうした生地になるわけなんですが、具体的な金額を例に挙げると少し分かりやすくなると思います。

 

 

 

HUISの生地を織っていただいている機屋さんの一つを例にあげます。
その機屋さんが織っている生地の中で最も高い生地は1mあたり18,000円です。これはシルクやカシミアではなく綿100%の生地で、細い高級綿糸を織った生地です。

シャツの用尺(一着に必要な生地のm数)は、概ね2mくらいになります。
つまり、この生地で仕立てたシャツは生地原価だけで36,000円になる、ということです。
その他縫製工賃やボタンなどの付属代などを含んだものがいわゆる商品原価となるわけですが、現代における一般的なアパレル製品の原価率は15〜25%程度と言われています。
こうした目安を基に計算をしてみると1mあたり18000円の生地を使ったシャツというのは1着20万円以上のシャツとなります。

こう価格を算出してみるとそんな高いシャツを作って誰が買うのか?と思われるかもしれませんが、そうした価格で販売しているブランドというものがあります。代表的なものがメゾンブランド(ハイブランド)と言われているブランドです。

あくまで例として、メゾンブランドというカテゴリでよく知られている名前を列挙すると、ルイヴィトン、プラダ、エルメス、ディオール、シャネル、バレンシアガ等といったものがありますが、こうしたブランドの公式HPでシャツをご覧になれば1着20万円台というのはごく一般的な価格帯になっていることが分かると思います。

 

 

一方で、高級なメゾンブランドになるほど生地がどこでどう作られたものなのか?といった情報は、企業秘密・トップシークレットになります。

なぜ隠すのか?という理由の一つに、「他社に同じ生地を使われないため」ということがあります。貴重な価値を持つ生地ほど生産量の少ないものになりますので、秘密にするというのは重要なことになります。

また「ブランド力を飛躍させる」という理由も含んでいます。
人は、中身がわからない素晴らしいものを前にすると、高揚感と共にある種、神秘的なイメージが刻まれます。
マジシャンが颯爽と繰り広げる、常識では起こり得ないはずのマジックを目の前すると、私たちはそのマジシャンのことをとてつもない人物だと認識します。憧れに近い印象も持つでしょう。
一方で、そのマジックの種明かしを見てしまうと突如、私たちはそのマジシャンのことを平凡な人間と認識します。
中身の見えない素晴らしいもの、にはこのようにイメージを飛躍的に高める効果を持っているのです。

こうした理由から、遠州の機屋さんたちというのは厳重な秘密保持契約を結んだ上でブランドに生地を提供しているわけです。

 

 

 

ハイエンドな生地を作れば作るほど世間には知られなくなっていく、同じ地域の人たちにすら知られなくなっていく、という歯がゆい産地のジレンマがここにあって、これが、冒頭に述べたような現象につながっているわけです。

「高級生地」というとなかなかピンと来づらいものですが、こうして少し解像度を上げてみると遠州織物という生地と産地が少し見えてくるのではないかと思います。

遠州地域内でも、HUISのこと、遠州織物のことを知ってくだる方が増えていることを実感しています。
2025年も一層多くの方に「遠州織物」を伝えていきたいと思います。

 

– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
高品質な“遠州織物”を使用したシンプルな衣服。
ふくふくとした豊かな生地の風合いを大切に。
HUISweb | www.1-huis.com
HUISonlinestore | https://1-huis.stores.jp
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –

 

カテゴリー

オンラインショップ