HUIS | 遠州織物

twitter Facebook インスタグラム ライン LANGUAGEJAPANESEENGLISH
HUISについて
HUISの商品とお店
HUISの活動

ブログ

知らずにいた故郷の誇り、遠州織物の今と未来 2025-08-17

【知らずにいた故郷の誇り、遠州織物の今と未来】vol.6 整経 前編

浜松出身のライター・宮崎駿(みやざきしゅん)さんが綴る『知らずにいた故郷の誇り、遠州織物の今と未来』、第6回です。
.
.
.

今回のテーマは『整経』について。400本の糸を手で丁寧に並べていく。しかも決められた順番があって、一度巻き取ってしまうと順番は変更できない。遠州織物を生み出すためには、そんな緻密な作業が必須。相変わらずですが、はじめて知りました。

整経について説明していただく中で、まず驚いたのがその手間です。遠州織物では、少ないもので2000本、多いもので8000本という経糸を、1枚の布の中にきれいに並べる必要があります。8000本なんて聞いただけで気が遠くなりそうというか、そもそも想像もできません。

そして、この大量の糸を扱うために「分割整経」という作業が必要になるとのこと。例えば4000本の経糸が必要な織物の場合、10本の経糸を400本に分割。それを10回巻き取ることで4000本にするそうです。「10本を4000本にする」この説明を聞いたときは、ただただ頭の中が混乱しました。正しく説明できているかまだ自信はありませんが、とにかく大変だということだけは察しました。

さらに驚いたのが、この作業は職人による手作業がベースになっており、柄物になるとさらに難易度が上がるとのこと。「先染めでストライプの柄を織る場合、3本青で3本白。また3本青で3本白と順番が決まっていて、職人さんが配列も全部計算して並べていく。その上、一度巻き取った順番は変更できない、まさに失敗の許されない世界なんです」と聞いて、遠州織物はいくつもの職人技が折り重なって、やっと生まれているものなんだと再認識しました。

そして、整経で特に責任重大なのがテンション調整。400本すべてを均等なテンションで巻き取っていく必要がある。もし糸が切れてしまったら、止めて、つないで、またテンションを見ながら徐々に動かしていく。古橋織布さんの話では、「整経で失敗してテンションにムラがあると、織機に乗せたところで糸が緩んだり突っ張ったりして、全部が織り傷になってしまいます。それも織機の上では修整できないので、一度乗せたらそのまま最後まで織らないといけなくて」とのこと。後から微調整すらもできない。だからこそ、職人の技が光るのかもしれません。

特に小ロットの分割整経は難しく、全てが端から端まで均一でないと「バンド」と呼ばれる10本ごとの筋が入ってしまい、真っ黒の無地のはずなのになぜかストライプになってしまうそうです。そうならないため、人の目で確認しながら手作業でビームに巻き取っていかなければならないんです。

整経には2種類あり、この400本を分割する作業は小ロット用の「分割整経」。大ロットの場合は「荒巻整経」という別の方法があって、そちらの方が効率的だそうです。しかし遠州では受注生産が中心。「古橋織布の場合、特に最近は直接アパレルブランドとやり取りすることが増えました。するとブランドごとの細かい要望に応える必要があるため、小ロットでの生産が中心になっているんです」とのこと。今後もこの流れは変わらないでしょう。だからこそ、この手間のかかる分割整経の技術を守り、継承していくことが必須になっているんです。

一方、大きな産地では機械化が進んでいます。テンションのムラなどはセンサーで感知されているそうですが、それらの機器を導入するためには相応のコストがかかってしまいます。そのため、小規模事業者では現実的ではないとのこと。

伝統や職人技を、効率化することは難しい。それは、当然のことなのかもしれません。

ですが、この手作業だからこそ生まれる価値があるとも思いました。

松下さんによると、同じ遠州産地で小幅織物を中心に生地を作っている小野江織物さんという機屋さんでは、最近若い女性が整経職人として入って、社長が「あの子の整経はすごい」と絶賛しているそうです。

今まで織りにくかった複雑で難しい織物も、その女性が整経してくれると上手に織れるとのこと。職人さんご本人も「黙々と糸を立てたり、テンション調整したりする作業が全然苦ではなく、すごく楽しい」と話していたそうです。古橋さんは「人とのコミュニケーションや表に立つのは苦手だけれど、実直に自分の手でやることにやりがいを感じる人はいるはず」と話されていました。本当に知られていないことで、そういう人たちと結びつく機会がないのが残念だとも話されていました。

知ってもらうこと。これは、遠州織物を取り巻く状況をより良くするために、やはり必要不可欠なことだと、今回も実感しました。

次回は、この整経を支えている職人さんたちの現状と、この技術をこの先につなげていくための課題について書かせていきます。

– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
高品質な“遠州織物”を使用したシンプルな衣服。
ふくふくとした豊かな生地の風合いを大切に。
HUISweb | www.1-huis.com
HUISonlinestore | https://1-huis.stores.jp
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –

カテゴリー

オンラインショップ