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お伝えしたいこと遠州織物のこと 2021-02-17

“衣服における「MADE in JAPAN」の誤解と、日本の生地産地のこと”

先週から21SSの新商品のリリースがスタートしました。今後も少しずつリリースの情報をお伝えしていきますね。また、さまざまな地域でのイベント出展もこれから続いていきます。

そうしたイベントでの販売の際などにはお客さまにいつもお話していることではありますが、あらためてお伝えできればと思うことを、今日は投稿させていただきたいと思います。

みなさんがお店に足を運んだ時、手にとった洋服の製品タグに「MADE in JAPAN」という記載があると、「生地から縫製まですべてが日本で作られた洋服」だと思われる方が多いかもしれません。

ですが、アパレル業界において「MADE in JAPAN」という表示は「縫製地」だけを指すもので、生地についてはどこの国で作られたものかということを言及されることはありません。言い換えると、購入するお客さまにとって、どこの国で作られた生地の洋服か、を確認する方法がないのです。

少し違和感を感じる方もいらっしゃるかもしれません、私たちも最初にそのことを知った時には不思議に感じました。ですが、これは国際的な統一規定のため、こうしたルールの上で世界中のアパレル製品は流通しています。

そのため、実際私たちが目にする「MADE in JAPAN」と表示されている洋服のうちの多くは、アジアを中心とする安価な海外産の生地を仕入れ、日本国内で縫製されたものです。

統計では、近年の日本国内に流通しているアパレル製品のうち約20%が「MADE in JAPAN」と表記されている衣服だと言われています。
そして、そのうち、実際に「日本産の生地」を使いかつ「日本で縫製」した衣服は、1%に満たないと言われています。
それだけ、日本国内で織られた生地を使った衣服はほとんど見ることがなく、希少であるということです。これは、驚くような数字だと思います。

では、なぜ流通コストを抑えられるはずの身近な日本国内の生地が、それほど使われることが少ないのか?

それは、日本で作られる生地の多くが、海外産の生地と比べて「高価な高級生地」であるからです。日本の生地を使った服は原価が高く、高価な値段の製品となってしまいます。

近年のアパレル業界は、ファストファッション化が進み、安価な衣服が主流となる中で、こうした国産生地の需要は大きく落ち込んできました。

ここで、日本の「生地産地」に目を向けてみたいと思います。
日本の生地産地というのはおもしろいことに、農畜産物のように地域ごとで特色があり、産地ごとに作られる生地が分かれています。例えるなら、「魚沼産のコシヒカリ」や「松阪の松阪牛」などといったように。

そんな風にイメージしていただくと、頭に浮かぶ生地や産地はありますでしょうか?

岡山・広島などのデニムは世界に誇る品質として知られ、ご存知の方も多いかと思います。そのほか、今治のタオル、奈良の靴下、など製品になるものは知られているものも多いです。

一方、中間材としての素材となるとだんだんと知られにくくなっていきます。愛知県一宮市の尾州織物はウールの産地、滋賀のリネン、新潟の横編みニット、和歌山の丸編みカットソー。

そして浜松市を中心とする「遠州」地域は、「コットン生地」の産地です。
こうした国内の産地で生産されている生地の多くは高級生地であり、品質に徹底してこだわる欧州の有名ブランドが衣服を作る際には、実際こうした日本国内の生地を数多く用いています。

ですが、生地をどこで仕入れたのか、という情報は高級ブランドになるほど企業秘密、トップシークレットとして扱われることになります。

残念ながら国内で作られている高品質な生地について、日本人である私たちが知ることが少ないのは、こうした事情もあります。

ではなぜ日本の生地は高級生地なのか?

それは、海外に比べ国内で生地生産に使われている機械は古いものが多い、ということが大きな要因のひとつです。
そうした機械は、時間と技術を多く要する機械です。最新型の機械で、安価に効率よく大量生産できる海外産の生地とは一線を画す生地。手間を惜しまずに職人が作る、付加価値の高い生地。
他にはない着心地や、複雑な織り柄など、独自の特色ある生地を作る地域が生き残ってきました。

衣服の低価格化が年々進む中で、それぞれの技術=強みを生かし、押し寄せる海外産の生地と戦ってきた歴史が、今ある生地産地の分布に現れているのです。

そして、このように日本の各地域に点在する繊維産地の中で、ここ「遠州」という産地の大きな特徴のひとつは、古い織機を扱う機屋さんが国内の産地の中で最も多いということです。
日本初の自動織機の生みの親である発明家「豊田佐吉」(トヨタグループ創始者)が生まれた土地であり、織機を作り操る技術者が集結したものづくりのまちとして、遠州の繊維業は大きく発展してきました。

HUISの衣服に使われているのは、そんな当時に発明された旧式の「シャトル織機」で織られた生地。
細い糸を高密度に織る、風合い豊かな生地は、何十年と磨き続けてきた、遠州の職人の技術が凝縮した生地です。特別な風合いと、様々な機能性を持つこの生地のことを、私たちは誇りに思っています。

シャトル織機で作られる、HUISの生地のことについては以前のブログ

【HUISの生地のこと】https://1-huis.com/all/11157

にも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
(google等で「HUISの生地のこと」でも検索できます)

もちろん海外産の安価な生地が一概に悪いものというわけではありません。効率よく大量生産が可能になったことでアパレル製品は安価に手に入れられることができるようになりました。そうした衣服もニーズに応えている服です。

そんな中で、私たちは個人個人にとって選択肢があることが大切だと思っています。今のような時代にあって、自分が望む、心地よい暮らし方を満たせるような衣服。そうしたことを求めるみなさんに、届けられるブランドでありたいと思います。

これからはじまる新たな2021年の春夏シーズン。今期もHUISは、さまざまな地域で、たくさんの方に、この生地の価値を届けていきたいと思っています。

 

 

 

 

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高品質な“遠州織物”を使用したシンプルな衣服。
ふくふくとした豊かな生地の風合いを大切に。
HUISweb | www.1-huis.com
HUISonlinestore | https://1-huis.stores.jp
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