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お伝えしたいこと 2023-07-26

\経通しで独立・起業した府川さんが繊研新聞さんで特集されました/

機織りをするために欠かせない、経通し(へとおし)という作業があります。
専門的な技術と高い集中力が求められるのですが、その存在はほとんど知られず、後継者不足が深刻です。

そんな経通しのイメージを変え担い手を増やそうと、浜松で経通し専業で起業し、担い手確保にも尽力している「マルマス経糸準備」代表の府川さんが繊維・アパレル専門紙「繊研新聞」にて”注目のヒト”として取り上げられました。

府川さんについては、以前HUISジャーナルでもご紹介させていただき、知ってくださっている方もいらっしゃるかと思います。
起業する前は、HUISの生地を織っていただいている古橋織布さんの職人さんでもあり、HUISのパートナースタッフとして販売にも携わってくれていました。

■“経通し職人・府川さんのこと”(2021年4月16日)
https://1-huis.com/all/12577/

「繊研新聞」さんの記事から一部抜粋しながら、改めて「経通し」と府川さんについてご紹介させていただきます。

「経通し」は織機を動かすための準備工程の一つで、長い間パートや内職、機屋専属の職人などが担ってきました。
経通しは、糸切れ防止のための”ドロッパー”、経糸通しを開いて緯糸を通すための”綜絖”、織り目を揃え織上がったばかりの布に緯糸を押し付ける”筬”の三つの穴に、一本一本を順序違わず経糸を通す作業です。
超高密度と言われるHUISの生地を織るために前工程として必要な「経通し」の作業は、たった1枚の生地でも数千本〜1万本。職人さんが何日もかけて細い糸を一本ずつ器具に通していく気の遠くなるような作業です。

そんな経通しに魅力を感じ、準備工程を専業で手がける「マルマス経糸準備」を2021年に立ち上げた府川さんですが、経通しと出会うまでには様々なご経験をされています。
府川さんは、大学で教育学を専攻し、卒業後もイギリスやフィンランドで教育哲学を学びました。帰国してインテリア関係の会社にも勤めた後、浜松に移り住みます。

移住当初は遠州織物も知らなかったそうですが、勤めていた雑貨店で偶然経通しを知ります。テキスタイルに漠然とした憧れを抱いていたものの専門性がなく携わることを躊躇していた府川さんでしたが、これならものづくりに携われるかもと古橋織布さんに就職します。

経通しの魅力を「集中力を持って同じ作業を続け、時間内に間に合わせるというシンプルさ」と語る府川さん。
とはいえ、「始めた当初は2000本通すのに12時間かかった」そう。
さらに、コードレーンやストライプの生地となると、通す順番や本数が決まっていて大変な集中力を要します。

古橋織布に就職した時から後々独立することを決めていたそうで「家業でなくても子供がいても、繊維製造業に携わる事は可能であることを立証してみたい」と3年間の修行の後、独立されました。

今は、工場を間借りして経通しの台を置き、1日10〜12時間座っての作業が続きます。
仕事の依頼は途切れることはなく、始めた当初は2000本に12時間かかっていた経通しも今では5時間で通し終えるまでになったそうです。

経通しの楽しさを感じる一方で、織布には欠かせない工程にも関わらず工賃があまりに低いという課題を抱えています。
経通しは通した本数で工賃が決まるため、従事した当初は1本2円。時給に換算すると500円。
府川さんは憤りを覚えるとともに、経通しは長い間、機屋の内職として女性やパートが担う裏方の仕事と捉えられ「技術を持つ人の地位が認められてこなかった」ことに気づき、職人が置かれている現状にも疑問を投げかけます。

かつて数百人いたと言われる「経通し」職人さんも現在70〜80代の方がわずかに残っているばかり。経通し職人さんが途絶えてしまえば、今HUISで使わせていただいている生地も、手に入れることはできません。

現在は3.5円まで工賃を上げることができているそうで、経通しに興味を持ち重要性を理解してもらいたいと技術向上にも熱心とのこと。
ですが、担い手にとって決してまだ恵まれた環境ではないと私たちは思います。

府川さんは、後継者不足を肌で感じこれからの世代の担い手を少しでも増やしたいと、経通しに興味があるという人には作業スペースも貸し出し、職人の地位向上と担い手支援にも奔走しています。
「県外から移住してきて場所も人脈も知識もなく、ゼロから始めた。やりたいと思ったその時に学び始めればいい。やってみたいと思ったらきて欲しい。」と自身の経験を踏まえながらエールを送ります。

職人の世界ではありますが、熱意ある多様な人材を受け入れる。私たちは府川さんの姿に、遠州らしさ、産地の包容力も感じます。
技術や伝統が途絶える寸前という厳しい状況を変えることは容易ではありませんが、府川さんのような心ある担い手が独立し活躍する姿は現状を変えていく一筋の光になるのではないでしょうか。

府川さんのような人の存在、そしてその活動が、より多くの人に認知されることが、産地の未来を変えていく力になると思っています。

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高品質な“遠州織物”を使用したシンプルな衣服。
ふくふくとした豊かな生地の風合いを大切に。
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