遠州の機屋さんたちは、メゾンブランドをはじめとする海外のバイヤーが訪れる世界最高峰の展示会に、以前から出展されてきました。それは、こうした展示会において高い評価を常に得続けてきたからです。
残念ながらそのことは報道されることもなく、伝えられることもなくこれまでは来ましたが、SNSが一般的となり、出展されている機屋さんたちが自らその様子を発信できるようになったことで、最近では私たちも知ることができるようになっています。
日本人にとって誇りに思えるようなことが、ほとんど知られずにいたことが、まずとても歯痒さを感じるところです。
こうした展示会に出展された方、またお手伝いに行かれていた方がみなさん口にするのが、「世界的な展示会の中にあっても、やはり遠州織物の風合いは別格だ」ということです。
HUISが生地を使わせていただいている古橋織布さんは旧式の「シャトル織機」を使うことで特別な風合いを生み出すことができますが、その機織り工程だけではなく、織る前・織った後には無数の工程があり、それぞれ熟練した職人が仕上げていくことで、他にはない特別な風合いの生地ができあがります。
まさに産地の技術の結晶が、遠州織物を生み出しているのです。
また、出展されていた方からお聞きした中でとても印象的だったのは、「私たちは“インパーフェクト(Imperfect)”なものを求めているんだ」というバイヤーさんが多かったという話です。
『インパーフェクト=不完全』という意味で、人間の手を多く介するものだからこそ生まれる不完全な部分を含んでいる、そうした生地が価値を持つ、ということをよく理解されているのだと思います。
少なくとも日本国内のアパレルの現場においては、こうした価値とは相反する道を歩んできました。
古い織機で織った生地は、他にはない着心地や風合いを生み出しますが、その一方で織傷や綿の飛び込み、シワや染めムラといったものがどうしてもつきまといます。
こうしたことに対する業界の厳しい管理の中で、最新式の機械は大量生産のための高速化とともに生地の欠点がないよう開発されてきました。現実問題として、アパレルの販売現場でこうしたことを許容される場面は多くはないでしょう。
遠州の機屋さんたちが海外の展示会に拠点を置き、国際的な舞台で高い評価を得る一方で、国内や地元では知られることがないという特殊な現在の状況が生まれたことにも、その裏側を知れば自然に理解が及びます。
職人の手作業を多く介する生地だからこそ生まれる、生地の価値。
『インパーフェクト(Imperfect)』という短い言葉の中には、たくさんの意味が込められていると思います。
旧式の織機だから生まれる、多くの人の手が関わってるからこそ生まれる生地の傷は、特別な価値のあるもので、むしろ大切にしたいと思える個性である。
こうしたことを理解してもらえることには時間がかかると思います。でも、HUISは自分たちの活動を通して、遠州織物の技術とともに伝えていきたいと思います。
来月、全国で発売となる書籍【HUIS.の服づくり】を刊行したいと思ったのは、こうしたことを今まで以上に多くの方に伝えたいと思ったことが理由です。
HUISの10年の歩みとともにまとめた書籍は、「HUIS JOURNAL」の編集とはまた違った視点でHUISをたっぷりと感じていただけると思います。ぜひ楽しみにお待ちくださいね。
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高品質な“遠州織物”を使用したシンプルな衣服。
ふくふくとした豊かな生地の風合いを大切に。
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