日本の繊維産地は高度な技術をによる質の高いものづくりで世界中から高い評価を得ているにも関わらず、高齢化・人材不足という課題に直面し、技術継承の瀬戸際に立たされています。
遠州産地も例外ではなく、国内唯一の国産コーデュロイ製造に携わるカッチング職人さんは40代が最若手。
そのような危機感の中、繊研新聞さんの記者さんがentranceの取り組みに注目してくださり、国内繊維産地の人材確保の現状と課題、それら打開策の一案としてentranceの取り組みについて繊研新聞「記者の目」にて掲載いただきました。
繊維産地特有の課題と遠州産地ならではの特徴的な取り組みを客観的に分かりやすく伝えていただき、有り難く感じています。
多くの方に国産アパレルの現状に関心を寄せていただければと、一部要約、抜粋して紹介させていただきます。
【人手不足が深刻化する国内繊維産地】
特に産地の分業を支える中小規模事業者で担い手が減っており、この傾向が続けば産地内での分業体制やサプライチェーン維持ができないほか、後継者不足による廃業の危機感も募る。
職人が高齢化する今、技術継承のための人手確保が急務となっている。
人手不足の打開策として注目したいのが、コロナ下に広まった「地方移住者」。
在宅勤務の広がりで移住のハードルが下がった。
SNSで生産背景の発信も増え、地方産地への就職は選択肢として存在感を増し、物作りに興味を持つ人材を全国規模でつかむ好機となっている。
【人材募集・就職転職活動の課題】
産地就職を活発化するには課題が多く、そのうちの一つが情報収集のしにくさ。
入社企業との接点は学校の紹介のほか、SNSなど広がりを見せる。
しかし、中小規模の企業では、ホームページの整備や人材採用にお金をかけられず、こうした接点や露出を作ることが難しい。
就職活動には効率が求められ、現場に足を運ぶにも時間と費用がかかる。
情報の少なさから就職を諦める人、もしくはどんな物作りがしたいのか具体化できないまま就職し、離職する人もいるはずだ。
産地内で連携し求人窓口の一本化、中小企業・事業者のフォローが必要となる。
【産地飛び出し催事】
産地連携の取り組みの一例として、遠州の若手繊維関係者が集まる地域活性化プロジェクト、エントランスを紹介したい。
同プロジェクトは18年に発足し、10年ほど前に東京から静岡県浜松市へ移住就職した浜田美希さんが代表を務める。
これまでイベントや商品開発で、遠州織物の魅力発信に取り組んできたが、5月に浜松を飛び出し、初めて東京で合同マルシェを開催した。
消費者だけでなく、移住就職に興味を持つ人材との接点拡大のため、職人たちによるトークイベントも開催。
産地の魅力、職人の人柄、「同じシャトル織機の平織りでも全く違う」などの各社の特性を比較検討できる場を作り、就活中の学生から注目を集めた。
【企業連携で産地への興味醸成】
特徴的だと感じたのは、個々の企業以上に、産地全体への理解を深められる点だ。
産地企業の比較検討として各工場のバスツアーは、個別企業を掘り下げるのに適している。
対して同イベントは遠州の川上、川中の複数企業が一堂に介し、クロストークなどを行うことで産地全体の雰囲気が捉えやすい。
遠州=エントランスというイメージの定着で、入社後の安心感にもつながる。
【主語を『産地』に】
浜田さんは中小規模の産地企業では、1人で複数業務を担当するケースも多く、特定の業務のみを想定して就職すると、ミスマッチが生まれやすいと指摘する。
また、少人数の現場だからこそ共に働く職人との相性も勘案事項だ。
以上の理由から産地への就職では、「『これがしたい』よりも『この産地で働きたい』『この人と働きたい』という、環境に起因する動機」作りを大切にする。
プロジェクトのメンバーで、遠州織を使ったアパレルメーカーのハウスで代表を務める松下昌樹さんは、「小規模な事業者の中には、採用に前向きでない事業者もいる」と話す。
エントランスを窓口として産地に興味を持つ若者と、そうした事業者をつなぎ、技術継承を考えるきっかけを作っていきたい意向だ。
産地間の連携は、人材の循環にも役立つはず。
ミスマッチがあった際、育てた人材が産地や業界から流出しないよう、周辺産地企業への転職を促すなど。
産地の規模感によって連携の難易度は大きく変わるが、問題解決の主語を、「個々の企業」ではなく「産地」とし、柔軟な姿勢で解決策を見いだしたい。
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高品質な“遠州織物”を使用したシンプルな衣服。
ふくふくとした豊かな生地の風合いを大切に。
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