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entranceお伝えしたいこと 2024-08-29

“意外と知られていない「いい生地」と「そうでない生地」の違い(前編)”

今年8月にOPENしたentranceショップのことについて先日、記事を書かせていただきました。

◾️紡績工場跡地で伝える、“遠州織物の本質”
https://1-huis.com/all/49196/

この記事では、日本の近代繊維業の発展の基となる織機の製造メーカーが集積していた「遠州産地」には、当時、「十大紡」と呼ばれる大手紡績企業すべてがあったことをご紹介しました。

これはとても珍しいことで、その理由が「いい生地とはどんな生地で作るのにどんな難しさがあるのか」を理解しやすい切り口になると思いますので、あらためて詳しく解説させていただこうと思います。

紡績とは、綿を糸にする工程です。
繊維の向きや品質が異なる綿を整え、いかに「細番手の高級糸」をつくれるかが紡績企業としての技術の証となり、そうした技術力や品質を示すために大手紡績企業はしのぎを削ってきました。その切磋琢磨が、日本の産業の技術力を示すものでもあったわけです。

こうした細番手の高級糸を高密度に織った生地がいわゆる「高級ブロード生地」や「高級ローン生地」としてアパレル業界では重宝されるのですが、ここでハードルになるのが「細番手の高級糸」を「高密度」に織る、ということです。

これがとにかく難しいことで、細い糸は切れやすく、密度を高めようとすると織り傷も生じやすくなります。
糸に負担をかけないよう低速の織機を使い、適切に糊付けされた糸を熟練の職人がさまざまな部品や糸の張力などを繰り返し調整し続けることで、はじめて「細番手高密度の生地」を織ることができます。

紡績企業として、どれだけ良い糸を作ったとしても、生地として織り上げることができなければ、洋服は仕立てられません。
つまり、どれほど高級な糸を開発できたとしても、その糸を織る技術がなければ、その力を示すことができないのです。

「遠州産地」に十大紡のすべてがあったのは、こうした「細番手の高級糸」を「高密度」に織る、という技術を持っている稀な地域だったからです。

では、どうしてそのような高い技術が「遠州」にあったのでしょうか?
それは当時、織機を作る製造メーカーが集積していた国内有数の地域だったからです。

今でも浜松に本社を構える自動車メーカーの「スズキ」は、もともと『鈴木道雄』が立ち上げた織機メーカー「鈴木式織機製作所」です。当時は「鈴木式織機」を製作していました。
現在でも、昔ながらの機屋さんたちに多く扱われている「阪本式織機」を生み出した『阪本久五郎』の織機メーカー「遠州織機」も浜松で創業し、今でも自動車部品・工作機械メーカーとして浜松を代表する企業です。

「トヨタ」も、もともとは織機メーカー「豊田自動織機製作所」であり、日本で初めて自動織機を発明したトヨタグループ創始者『豊田佐吉』は遠州生まれです。
「ホンダ」の『本田宗一郎』も浜松生まれで、浜松で創業。今でも創業の地には工場があります。
『山葉寅楠』の「ヤマハ」や、『河合小市』の「カワイ」も浜松で創業。世界的な楽器メーカーも、浜松に集中しています。

 

 

こうした世界的な日本のメーカーが、局所的に遠州から生まれていったのはなぜか?
それは、複雑な「織機」を発明し、さらに実用レベルで製造・販売できるメーカーが集中していたことから、高いエンジニア技術や精神が浜松に蓄積され、国内有数の「発明の街」として発展していったからだと言われています。

また、当時の日本の主要産業は繊維産業でした。
織機メーカーが集まる浜松には、日本各地から技術者や高い志を持った若者が自然と集まり、日本でも屈指の技術が集まっていたわけです。

このように、遠州にはごく自然と、複雑な織機を作り扱うことによって培われた高い職人技術が定着していたわけで、「十大紡」のすべてがここに拠点を構えることも自然であるし、難しいとされる「細番手の高級糸」を「高密度」に織る技術が、遠州だからこそ今もまだ残っているのです。

「細番手の糸」を紡績し、「高密度」に織るということが、いかに高度な技術なのかということをご理解いただいたところで、いよいよ本題である「いい生地」と「そうでない生地」の違いについてです。

例えるなら「いいワイン」と「そうでないワイン」のようなもので、なんとなく分かりそうでいて、結局よくわからない、というのが一般的な感覚かもしれません。
ですが、ワイン専門家の人からすれば、「いいワイン」と「そうでないワイン」の違いははっきりとあって、はっきりと説明ができるわけです。
生地の世界も全く同じで、実は繊維関係者の方は誰もが、この違いをはっきりと分かっています。そして、実はそれはとても簡単です。

詳しく掘り下げていけばもちろん色々な要素の話はありますが、まずは「いい生地」と「そうでない生地」の違いを知るために、2つの要素だけをシンプルに考えると分かりやすいです。

それは、

①糸の品質:「良い糸」なのか、「そうでない糸」なのか
②機械の種類:「ゆっくりと織ったり編んだりする機械」なのか、「高速で織ったり編んだりする機械」なのか

次の投稿では、この2つの要素について詳しく説明させていただきます。

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高品質な“遠州織物”を使用したシンプルな衣服。
ふくふくとした豊かな生地の風合いを大切に。
HUISweb | www.1-huis.com
HUISonlinestore | http://1-huis.stores.jp
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