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知らずにいた故郷の誇り、遠州織物の今と未来 2025-12-08

【知らずにいた故郷の誇り、遠州織物の今と未来】vol.11「静かな古橋織布で聞こえた遠州織物の息遣い」

浜松出身のライター・宮崎駿(みやざきしゅん)さんが綴る『知らずにいた故郷の誇り、遠州織物の今と未来』、第11回「静かな古橋織布で聞こえた遠州織物の息遣い」です。
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8月のお盆帰省に合わせて、古橋織布さんの見学をさせていただきました。

すぐ近くには友人の家があったので、古橋織布さんまでの道のりは、子供の頃から見慣れている風景でしたが、実はその道を通るのは10年ぶり。大学入学前の1ヶ月、浜名湖ロイヤルホテルで短期バイトをしていたとき以来でした。懐かしい気持ちが溢れ出そうになりながら、公民館の交差点を右に曲がって古橋織布さんへ。当日はお盆休みということで、松下さんにご案内いただきました。

まず外観から、圧倒的な歴史を感じました。一言で言えば、古い建物。それは間違いありません。ですが、遠州織物を支え続けてきた風格のようなものを感じました。それと、窓が屋根の部分にはめ込まれていたんですが、差し込む光量を一定に保つために、織布工場では必ず北向きに窓があるとのこと。細かなところにも、徹底したこだわりがあることを再認識しました。

そしていよいよ中へ。人生ではじめて「圧巻」という言葉を使いますが、まさにそうとしか言えないような光景でした。10台を軽く超えるシャトル織機がずらっと並んでいて、その一つひとつが、ピアノほどのサイズ感。そして一番奥には、一際大きな織機が佇んでいました。当日はお休みなので稼働していなかったんですが、全く音がしないからこそ、独特な迫力のある光景になっていました。もしこれが全て稼働していたら。古橋さんたちにとっては日常の光景ですが、はじめて見る僕は活気と音に、きっと圧倒されていたでしょう。

 

 

 

そして一番入り口側にあった織機を見て、あらためて職人が支えてきた産業であることを実感しました。織機には、びっしりと隙間なく並ぶ数えきれないほどの経糸。本当に細い糸が、これでもかというほど並んでいました。この織機にセットするまでの準備や、織っている最中に糸が切れた時の補修など、随所に職人の手作業が必要だということは知識として知っていましたが、実際にこの光景を目の前にすると、その大変さがようやく実感できました。一本でも間違えたら製品にならない。どれだけの集中力が必要になるんでしょうか。

ふと織機の土台部分を見てみると、埃が乗っている部分がありました。てっきり何十年もの歴史の積み重ねかと思いきや、実は長くても2ヶ月ほどで蓄積した埃だそうです。織り上がって経糸がなくなるたびに、職人さんたちは丁寧に掃除をしているとのこと。それでも、わずかな期間でこれほどの綿埃が積もるのが織物工場の日常です。毛羽が舞う中、毛羽が巻き込まれないよう、
糸の通り道の埃は定期的に取り除くなど工夫をしながら、職人さんたちは織り続けている。こまめな手入れをしても、またすぐに埃が積もる。後々「埃は誇りなんだと思います」という言葉を聞いて、まさにその通りだと深く納得しました。この埃こそが、ここで確かに織物が作られている証なのです。

 

 

 

手入れの話をもう少し。工場の一角の壁一面には、さまざまな工具が並べられていました。見覚えがあるものから、使い方が想像できないようなものまで。それも、各種類一つずつではなく、サイズごとに用意されており、それらがずらりと壁に整列していました。職人さんたちが自らこの工具を使って、長年メンテナンスを続けてきたとのこと。職人技というのは、織物に直接触れるとき以外にも、至る所で受け継がれてたものなんですね。

そして、環境についても興味深い話を聞きました。工場にはエアコンがありません。これは織物や織機のために湿度を70%程度に保つ必要があるためで、乾燥を防ぐことで糸切れを防止し、品質の高い織物が織れるようにという工夫だそうです。その代わり、年中15度くらいの井戸水を活用した空調設備があるとのこと。古い織布工場にはどこにもこうした設備が備わっていて、夏場は冷房として、冬場も湿度管理のために使われているそうです。これが意外と涼しくて、夏場は快適だったりするとのこと。ただし、織機が稼働するとモーターの熱が充満して室温が上昇するため、工場内の2〜3人(メンテナンス1名、織り子1〜2名)は、その熱とも向き合いながら作業しているそうです。松下さんが以前熱中症になりかけたという話も聞いて納得しました。井戸水という先人の知恵で環境は改善されているけれど、織機の熱と湿度の中で集中力を保ちながら作業を続けることの過酷さは、変わらないのでしょう。

地下水を活用していると書きましたが、この地下水が遠州の産業には深く関わっていることを、この日に松下さんから教えていただきました。実はこの地下水、冷房のためだけではなく、遠州織物を生み出すために必須のもの。それともうひとつ、うなぎの養鰻池もこの地下水を使って行われているそうです。そして、雄踏はこの地下水がかなり豊富なエリアで、だからこそ遠州織物とうなぎの養殖、どちらの産業もこの場所で発展したとのことです。全部が全部、はじめて聞く話でした。ただこの地下水が年々減少してきているらしく、遠州織物を取り巻く問題点は、こういったところにも隠れているようです。

 

 

 

 

今回は、お休みの日にお邪魔しましたが、ぜひまたシャトル織機が躍動している姿も拝見しに行こうと思います。

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高品質な“遠州織物”を使用したシンプルな衣服。
ふくふくとした豊かな生地の風合いを大切に。
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