遠州織物×久留女木の棚田 棚田イメージ
INTRODUCTION

絶景の傾斜地に段々と水田が並ぶ
静岡県浜松市「久留女木の棚田」
地域の営みにより受け継がれてきた貴重な資源も
今、その存続が危ぶまれている。

「遠州織物」と「農業」
歴史ある地域産業の新たな連携が未来を拓く、可能性を見出す

遠州織物×久留女木の
棚田プロジェクト

「遠州織物×久留女木の棚田プロジェクト」は、久留女木の棚田で生産した綿花から糸を作り、
遠州織物として織り、HUIS製品として全国で販売するプロジェクトです。

久留女木の棚田イメージ

耕作放棄地である棚田を利用して綿花を育成・収穫し、遠州織物製品として販売することにより
棚田を維持・活用し、日本の原風景を保全します。

Task

「プロジェクトの背景にある課題」

■「久留女木の棚田」が抱える課題
農林水産省が認定する“つなぐ棚田資産”にも選ばれている「久留女木の棚田」は、全国でも有数の地域資源で、最盛期には800枚の田んぼが耕作されていました。しかしながら、近年は高齢化・人口減少により以前の3分の2が休耕田となり、後継者不足、農地の耕作放棄地化が深刻です。
こうした課題に対処するため、令和4年度に地元住民を中心に「久留女木地域振興協議会」が設立されました。地元企業や大学と草刈りやボランティア・サークル活動などで連携を行いつつ、耕作放棄地を少しでも減らし棚田を後世に遺すべく、新たな連携企業先や連携の在り方を模索しています。

■「遠州織物」が抱える課題
高級アパレル生地として現在、業界では世界的な高級生地として知られる「遠州織物」ですが、地元でもかつて繊維産業が盛んだったことはほとんど知られていません。最盛期には1000軒以上あった機屋も、アパレルのファストファッション化、担い手の高齢化や後継者不足などさまざまな要因による廃業が後を絶たず、今では数十軒を残すだけとなっています。
アパレル生地における遠州織物は国際的に高い評価を得る一方で、中間材であることからB to Bを基本とした流通形態、および「高品質」「少量生産のため希少」なものづくりの特性を持つことから、情報が閉塞的で、一般消費者にその認知が広がらないジレンマを抱えています。

Goal

「プロジェクトの目指すもの」

■農業に向けた目的
HUISの綿花栽培では、耕作放棄地化してしまった棚田を綿花畑として活用しています。こちらの畑周辺も数年前まで棚田として人の手が入っていた場所ですが、耕作者がいなくなり、今は一体が山林状態となってしまっていました。

高齢化や少子化などを原因に、先祖代々繋いできた田んぼの耕作者がいなくなり、荒れた畑となってしまう「耕作放棄地化問題」は現在、日本農業が抱える大きな社会課題です。中山間地に関わらず、もともと農業が盛んだった平地においても、この耕作放棄地化は日本全国で急速に進んでいます。

一度耕作放棄地となり山林化してしまうと、再び畑に戻すことは容易ではありません。優良な農地と言われていた土地であっても、耕作する人がいなくなれば、作物が育たない荒れた土地へと置き換わっていってしまうのです。

ただ、故郷の家を継ぎ畑を耕す人々が多かった時代から、現代の日本は生活様式も大きく変わってきました。時代が移り変わる中でこうした流れが起こることは、自然なことでもあると私たちは思います。

そしてだからこそ、こうして消えゆく地域資源のことを知ってもらえる機会が生まれることが大切だと思います。

ここ、久留女木の棚田も耕作放棄地化が進んでいます。それでも、地元の方々の熱心な取り組みで、これだけの棚田が維持されています。
中山間地における農業、代え難い景観、そしてそこで暮らす人たちの営みに価値を見出してくれる、ボランティアの方々もいます。そして企業との連携という形から、また新たな未来が拓く可能性があるかもしれません。
このプロジェクトを通して、耕作面積を維持し莆田周辺の環境を守るとともに、棚田や農業への興味関心を寄せていただく機会になればと思います。

■繊維業とアパレル業界に向けた目的
上記の通り、耕作放棄地化が進む中山間地農業の課題解消に向けた一歩がプロジェクトの目的の一つですが、現実的に採算性を考えたときには、少し難しいプロジェクトになります。

HUISが使用する生地はすべて、数ある綿の中で最高級の綿糸を用いて作られていますが、こうした高級綿が作られている国というのは、多くが発展途上にある地域です。そのため、非常に手間のかかる高級綿花の栽培を経ても、私たちが手にすることができる程度の価格で流通されている現状があります。

対して、日本国内の人件費や地代で綿花を作る場合、高級綿でなくても、できた綿や糸はとても高価なものになってしまいます。自社で綿花栽培を計画するアパレル企業は多くありますが、そのほとんどが製品化を前に頓挫してしまう理由は、この採算性の部分にあります。

以前、備前産地のデニムメーカーさんが100%国内栽培をした綿糸を使いデニムパンツを作った際、1着100万円を超えるデニムパンツになってしまったそうです。この話をだけを聞いても、国産綿で洋服を作る難しさとともに、高級綿を作っている国々から私たちがどれだけ恩恵を受けているかよくわかります。

今回、久留女木で私たちが作る綿からできる糸も、一部を含んだ糸とはいえ、通常HUIS製品が使用している糸よりも必然的に価格の高い糸になってしまいます。つまり、その糸を使って仕立てた服はとても高い服になるということです。

そうした商品が売り場に並んでいることが、いろいろな気づきにつながればと思っています。
「棚田から作った服だからすごいんだよ!」という付加価値をつけることが私たちの狙いではありません。あくまで、気づきにつながるきっかけづくりのプロジェクトです。プロジェクトを通して、農産物たる綿花から私たちが身につける服になるまでの、いろいろなことをお伝えすることができると思います。

アパレル製品の売り場において、綿花栽培を話題にすることは通常ありません。その先にいる、糸作り、機織り、染色、縫製など、無数の職人さんたちの存在をイメージすることはないでしょう。
ですが、アパレル製品を作るのはそうした多くの産業の連なりです。ややもすると、機械で自動的に生成されているようにも思われてしまいがちな衣服の一つ一つは、多くの人の手、途方もない作業の積み重ねでできあがっています。

動画で見る
プロジェクトの様子

久留女木の棚田イメージ

「久留女木の棚田について」

久留女木(くるめき)の棚田は、浜松市北区引佐町の東久留女木と西久留女木にまたがる、観音山の南西斜面(標高250m付近)に展開しています。総面積は7.7ha、その中に約800枚の田んぼがあるといわれ、その美しい景観は「日本の棚田百選」や「静岡県景観賞」にも選ばれています。 棚田の起源は平安時代とも言われていますが、戦国時代(井伊直虎の祖父、曾祖父の時代)に、井伊家の庇護を得て開墾が進んだと考えられており、現在も、井伊家の家臣の末裔が、棚田を耕し続けています。
また、久留女木を流れる都田川には、竜宮に通じるといわれる深い淵があり、その淵から子どもが現れて村人の農作業を手伝ったという「竜宮小僧の伝説」が語り継がれています。棚田の最上部には「竜宮小僧」と呼ばれる湧水があり、今も棚田を潤す水源となっています。

令和4年度からは「久留女木地域振興協議会」が発足、地元住民と域外耕作者による「竜宮小僧の会」が棚田の保全活用、収穫イベントなど関係人口創出ためのイベントを企画運営しています。本プロジェクトでは、「久留女木地域振興協議会」に綿花栽培を委託しています。

久留女木の棚田についての詳細は「竜宮小僧の会HP」をご覧ください。

竜宮小僧の会HPはこちら
blog
PDFカタログ メディア掲載情報 HUISジャーナルPDF HUISinhuisカタログ