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お伝えしたいこと遠州織物のこと 2021-04-04

HUISパートナースタッフの門出

4月は入学、入園、そして新社会人の門出の季節。

先日、HUISで長く尽力してくれてきたパートナースタッフの一人が、新社会人として、国内有数の繊維産地「尾州産地」へ就職し、新たな一歩を踏み出されました。

HUISでは、全国各地で出展させていただいているイベントやショールームにおいて、「パートナースタッフ」さんたちに協力していただき、販売を担っていただいています。
パートナーのみなさんは、それぞれにご自身の事業や仕事を持ち、展望や世界観をもった方々で、私たちにはない本当に様々なスキルをお持ちです。

いろいろな経緯でHUISの活動に共感いただき、それぞれの地域で、遠州織物の価値を伝えることに協力をしていただけているみなさんは、まさに「パートナー」であり、いつも大きな力を貸していただいています。

3年前の冬、大学2年生の頃からHUISの販売を手伝ってきてくれた彼女は、どんな現場でも、産地のものづくりや、そこで生まれる生地の価値を、一心に伝えてきてくれました。その熱意を受けて、HUISのファンになってくれた方は少なくありません。
現在6年目を迎えるHUISにとって、まぎれもなく創成期を支えてくれた一人でした。

遠州だけでなく、さまざまな産地やアパレルの業界に精通していた彼女は、昨年度まで学んでいた大学の卒業論文で「繊維産地」のことを自身の視点からまとめられました。

その中に、産地発ブランドの一例としてHUISのことを取り上げてくれています。
販売という立場でHUISに長く関わってきてくれていた方が見る、HUISの価値の視点がとても嬉しく、一部ですが以下に紹介させていただきたいと思います。

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尾州を主とした繊維産地における「作者の再生」
─バルトのテクスト論の批判的検討を通して─

服は「人が作っている」ということを理解している消費者が、この国にはどれだけいるだろうか。服は生地から作り、生地は糸から作り、糸は繊維から作る。その間には更に多くの諸工程が存在し、そこには様々な人が携わりものづくりを行っている。機械からぽんと、完成品が飛び出してくるわけではない。服が生み出されるまでには、長い物語が存在しているのだ。そう捉えると、わたしたちは服という「作品」を着ているのかもしれない。

ファストファッションはわたしたちに簡単に装うことのできる時代をもたらしたが、その反面、生産者と消費者の距離を遠ざけてしまった。複雑になった生産構造は過剰な供給や無理のある生産サイクルを固定化し、私たち消費者は服を消費するばかりだ。そうした中で作り手の存在は薄れ、服ができるまでの背景は見え辛くなってきた。わたしは、高校2年生の時に初めて「生地を織る工場」へ見学に行き、それを契機として服に携わる道に進むことを決めた。そこで見た光景は、想像を絶するほど途方もない、そして熱量の込められた「ものづくり」の現場であった。糸から生地が出来るまでの工程を見学したことで、その前後を含め、服ができるまでの背景には果てしない長い道のりが存在していることを工場の中で感じたのだ。その工場との出会いが、わたしの「尾州」との出会いでもあった。

【中略】

3-2-6

本事例の対象となるHUISにおいて、筆者は2018年より販売スタッフとしてブランドに関わってきた。そのため、「読者」─消費者としての視点と共に、広義での「作者」─ここでは販売員としての視点から、事例をまとめる。

【中略】

HUISの商品はハイブランドと同等の生地を使用しつつも、自身が産地内にいるメリットを生かし、機屋と直接の取引を行うことで上代を極力抑え、「日常着」として着用してもらえるよう提案している。 また、単に生地を仕入れるのではなく、機屋と直接打ち合わせを行い生地を企画するところから始め、商品の生産 、取扱店への卸売り、百貨店などでの催事出展、 自社のオンラインストアでの直接販売など、幅広い業務を行う。「川中」と称されるアパレルメーカーでは、生地を仕入れて商品を作り、卸売りまでを行うのが一般的であるため、川上(生産)から川下(販売)まで目の行き届いた体制になっているHUISの特徴が窺える 。この体制は、一貫性のあるブランドの世界観を築くと共に、商品の情報や価値を正しく「読者」である消費者に伝えることを実現している。各地で行う「接客販売」によってファンが生み出されているという特徴も、この体制によるものである。

【中略】

HUISのファンの形成には、各地で行われる催事やイベントでの「接客販売」が大きな要因となっていることを先述した。確かな品質の生地と、それを丁寧に言語化して消費者に伝えるHUISの姿勢は、消費者に対して産地や工場、生地、そして服の価値の理解を促しているといえる。また同時に、服そのものの見方にも変化をもたらしていると考えられる。実際に、接客された顧客たちは産地や生地について知ることでHUISの魅力を感覚的かつ理論的に理解し、また日常でHUISの服を着用し生活する中で、より実感を伴って理解を深める傾向にある。この傾向は、ブランドにおける「伝える」面を担う昌樹さんが認識していると共に、筆者が3年に渡りHUISの販売を行う中で感じたものでもある。本項では、百貨店の催事やイベントの場において、HUISの販売スタッフとして接客を行い感じた、「読者」である使い手、つまり消費者の消費行動の中での変化を明らかにする。

【中略】

販売の多くは、各地での期間限定の出店におけるものであるため、その地域のファン─「既存顧客」や「見込み顧客」に対してSNSやホームページで事前に情報を届け、来店を促すことが重要となる。そして、販売期間においては、通りすがりの「潜在顧客」へいかにアプローチを行い、「新規顧客」にするかが重要となる。先述したように、HUISは接客において多くのファンを生み出しており、その背景には、徹底的に生地の魅力を伝える独自の接客スタイルの存在がある。浜松発ウェブマガジンにて、あゆみさんは次のように語っている。

[私たちは服を通して、生地づくりの技術と産地の想いを伝えていると思っています。肌触りが良いとか、軽くて着心地が良いとか、丈夫だとか、それは触れたり着たりすれば感じられることなのですが、それだけでは古橋織布さんの生地の価値を伝えられてはいないんです。…(中略)…私たちが使わせていただいている生地は、これだけの技術とかけた時間があって、はじめて生まれる生地なのだということ。効率化の時代の中にあって、旧式のシャトル織機を使い続ける古橋織布さんの志が、唯一無二の生地を生み出しているのだということ。そうしたことが伝わって、だからこうした特別な機能を持つのだと、お客様に理解していただけたときに、はじめて代えがたい価値になるんです。だから、私たちは伝え続けることが必要なんです。](『TOWTOWMI.jp 』2019 6.286.28)

【中略】

消費者にとっては、事前に情報や知識を持っていなければ、商品の評価は自身の目で見たことや感じたこと、接客などから得る情報のみから判断することとなるため、 接客の濃度がその商品に対する理解の深さに直結する 。生地の良さを理論的に理解してもらうには、原料や製織工程といった、消費者から遠く離れた生産背景での「物語」を言語化して伝えることが必要不可欠であり、それを聞き興味を持つことによって、潜在顧客は見込み顧客へと変化していく。

また、新規顧客が既存顧客になるケースも非常に多い。店頭での接客によって生地及び服の価値を知った上で、日常生活で着用し実感としてその良さを感じることで、オンラインストアでの注文、次の出店のタイミングで来店するなどしており、そこからは顧客ロイヤルティの高さが窺える。 理由としては、 そうした既存顧客の場合、二度目以降の来店までにHUISのホームページやSNSから情報を収集し、生地の知識を得た状態にあるため、よりブランドや商品に対する愛着や理解が深化している様子が伝わるからだ。また、ロイヤルティを示す重要な行動として挙げられる項目に、「友人や同僚に商品・サービスを勧める可能性」というものがあるが、HUIS の既存顧客 は これに当てはまる。 HUIS は対面販売において厳格に顧客管理などを行っているわけではないためあくまでも経験則になるものの、友人や夫婦間において「商品を勧める」傾向にある顧客が多く存在する のだ。

商品を勧めるという行動には、商品の理解と共に、親しい人を満足させるほどに自分自身が商品に魅力を感じていることが必要不可欠である。着用することで価値をより実感した顧客が既存顧客になるケースがあると先に述べたが、商品の理解を深化させる取り組みもHUIS は欠かさずに行っており、それがロイヤルティの向上にも寄与しているといえる。

【中略】

潜在顧客の中には、「遠州産地を知らなかった」「シャトル織機というものを初めて知った」という人が多く、更には「服が糸からできていると想像したことがなかった」という人までいる。そうした顧客に対しても生地の説明を丁寧に行うことは、単に自社の商品に留まらず、「服」そのものに対する見方に も 変化をもたらしているのではないかと考えられる。

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服づくりの世界は、そこに関わる職人さんが幾重にも重なっていることが特徴です。機織りや縫製だけでなく、紡績、撚糸、整経、経通し、染色、生地加工、ほかにも細かな工程を職人さんたちが細分化して担われています。

そして、産地でものづくりに携わる職人さんたちは、往々にして寡黙です。自ら伝えられる場は、多くはありません。だからこそ、自身が作り出すものに、全てを託します。

販売の現場は、こうして幾重にも積み重ねられた技術・ものづくりの価値を伝える最終工程であって、職人さんの誇りを届ける、最も大切な現場だと考えています。

あらためて、各地で力を貸してくださっているパートナースタッフさんたちに感謝するとともに、人生の新たなスタートを切った彼女の活躍を、心からお祈りしています。

(自身のインスタグラム@terayanmaで発信されていますのでよろしければぜひご覧ください)

 

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