【知らずにいた故郷の誇り、遠州織物の今と未来】vol.18「『似合う』ではなく『着たい』で選ぶ服」
浜松出身のライター・宮崎駿(みやざきしゅん)さんが綴る『知らずにいた故郷の誇り、遠州織物の今と未来』、第18回「『似合う』ではなく『着たい』で選ぶ服」です。
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前回、HUISのワンサイズという考え方について書きました。サイズが理由で着たい洋服を諦めてしまう。そのハードルを取り払い、誰の体にも自然と馴染む服であること。それがHUISの洋服の一つの特徴でした。
今回はもう一つの要素、「ユニセックス」という考え方と、洋服を選ぶ上で避けては通れない「似合う・似合わない」という問題について書いてみたいと思います。
欲しいと思っていた服を試着してみたら、なんだかしっくりこない。鏡の前で「これ、自分に似合っているのかな」とわからなくなってしまう。そういう経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。
私自身、いまだに自分にどんな服が似合うのかを正確には把握できていません。なんとなく、黒のトップスがしっくりこないという自覚だけはあるのですが、それ以上のことはよくわかりません。だから基本的に、妻に確認してから買うようにしています。自分ではいいなと思っていても、確信が持てない。せっかく買うなら、似合うと思われる洋服を買いたい。そのための後押しが欲しいからです。
似合うかどうかを気にせず、着たい服を自由に着ることができる人もいます。でも私と同じように、自分の感覚に自信が持てない。周囲の目も気になってしまう。そういった思いから、着たいと思い手に取ったはずの服を、結局棚に戻してしまった経験がある人も少なくはないと思います。
そしてここ数年、服を選ぶことが少しややこしくなってきたように感じています。骨格診断やパーソナルカラー診断といったものが、SNSやインフルエンサーを通じて、いつの間にか広まりました。正直なところ、私にはその根拠や基準についてあまりわかっていません。
もちろん、自分に似合うものを知る手がかりとして役に立つこともあるのでしょう。ただ、こうした基準が増えたことで、服を選ぶときに判断しなければいけないことが増えています。自分の気持ちに沿って自由に選んだ方が楽しいし満足できるはずなのに、よくわからない基準に左右されて選択肢が狭まっていくのは、もったいないことだと感じています。
さらに、似合うかどうか以前の話として、メンズとレディースという区分もあります。洋服そのものは気に入っているのに、性別の区分が気になって一歩引いてしまう。手に取る前に、自分の選択肢から外してしまう。もちろん、体格の違いに合わせたデザインや、好みの傾向に応じた区分には理由があります。ただ、それが理由で諦めてしまったり、そもそも出会う機会すらなかったりするのは、やはり惜しいことです。
HUISにも、こうした壁と向き合った経緯があります。「家族みんなで着てほしい」という思いからスタートしたブランドですが、立ち上げ当初、サイズ展開されたシャツなどの一部アイテムはユニセックスとして販売していましたが、他の大半のアイテムはメンズ・レディースとカテゴリーを分けていました。
ところが販売を続ける中で、「メンズの大きいシャツのほうが私にはしっくりくる」という女性のお客様の声が聞こえてきた。自分たちの作ったカテゴリ分けが、壁を作ってしまっていたことに気づき、そこからユニセックスの商品が増えていきました。今では家族で兼用される方も多いそうです。
私が初めて購入したHUISの洋服は、白いバンドカラーのシャツでした。1着目ということもあり、まずはシンプルなものを選びました。以前、遠州織物の生地に触れたことはありましたが、この商品自体はオンラインストアの情報だけで選んでいます。それでも、似合うかどうかについて迷うことはありませんでした。妻に確認することもなく、自分で迷わず決めることができました。
前回書いた通り、HUISが使う遠州織物には、着る人の体に自然と馴染むしなやかさがあります。サイズの壁を取り払うこの生地の力に加えて、どなたにも馴染むベーシックなデザイン。この二つが合わさることで、「似合うかどうか」というハードルそのものが消えているのだと思います。
服を選ぶことは、本来楽しいことのはずです。さまざまな基準や情報は、参考にはなります。でも、それによって自分が着たいという気持ちが後回しになってしまっては、本末転倒だと思います。着たいと思った服を、ただ着たいから選ぶ。HUISのユニセックスでワンサイズという方針と、遠州織物の力が、そのシンプルな選び方を可能にしてくれている。私はそう感じています。











