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お伝えしたいこと遠州織物のことイベント情報 2026-08-08

大盛況となったルミネシンガポール初出展を終えての所感

6/22(月)よりスタートした初のシンガポール出展となる「ルミネシンガポール」での遠州織物HUIS POPUP。

先月無事、大盛況の中で終えることができました。

こちらのPOPUPスペースは「日本のものづくりの発信拠点」としてシンガポール中心地・ラッフルズシティに位置するルミネシンガポールさんが設けているもので約1ヶ月の長いイベント期間となりましたが、今回の「遠州織物HUIS POPUP」は当スペースにおいて過去に例のないほどの売上実績となったそうです。

こうした大きな実績をあげられた要因について、現地ルミネシンガポールのスタッフさんなどと連携を取り合いながら分析をしてきましたが、現地へ赴いて感じてきたことを含め、所感をまとめてみたいと思います。

 

 

■産業構造から読み解く国柄

今回のPOPUPの事前準備においては、シンガポールのお客さまは売り場に置かれたポップ(説明パネル)をよく読まれるので多く用意しておくと良い、とお声かけいただいていたこともあり、通常よりも多くのポップを用意して売り場づくりをしていました。

具体的には、「HUISのコンセプト」「遠州織物とは」「旧式シャトル織機の解説」「HUIS in house(スヴィンコットンの解説)」「HUISのくつした(ダブルシリンダーの解説)」といったものです。

通常、こうした売り場のポップは目に留めてもらうことは多いものの、ご覧いただくのは多くの場合“メインコピー”と言われる大きな文字や“画像”についてまでで、そこに書かれた細かな文字まで読んでいただけることはそう多くはありません。

一方、ルミネシンガポールでは実際、一つ一つのポップの前に立ち止まり、小さな文字まで一語一句すべて読みながら順に商品を見ていくお客さまが多いのが印象的でした。

その理由について、現地のスタッフさんや通訳さんたちはよく「私たちは左脳タイプなのよ」と言った話をしていたのですが、実際、こうした部分で国内との違いは実感したところです。

肌触りや着心地などを気に入っていただけるのはもちろんですが、購入する物を選ぶ際にはその背景にある理由や価値を理屈で納得した上で選びたいという傾向が大きいのです。

HUISは単に商品を展示するだけでなく、産地の歴史や技術の情報を詳しく伝えることがブランドとしての特徴であり、こうしたことが特に好相性だったのだと感じられます。

 

では、なぜシンガポールではこうした「左脳タイプ」の方が多いのか?

 

その理由の一つに、国としての産業構造があると考えています。

シンガポールの産業の特徴を俯瞰的に見ると、国土が狭く環境資源が限られていることから一次産業(農林水産業)がほとんどなく、三次産業(サービス業)が国内産業の約7割を占めています。

また2-3割を占める二次産業(製造業)に関しても、高付加価値型の半導体やバイオ・精密工学といったものに特化した構造となっていて、自然や職人の手作業をもとにしたものづくりが多様に広がる日本と比べ、理論的なビジネスに特化した国柄であると言えます。

これはどちらが良い悪いというわけではなく傾向についての話題ですが、普段こうした仕事に携わっていることの多いシンガポールの方々に、理屈で価値に触れようとする「左脳タイプ」が多く、前述のようにポップに記載された文字情報を一語一句読んで理解しようとする傾向があることは自然なことだと感じました。

また、こうした私たちから提供する一次情報を適切に汲み取り、シンガポールのお客さまへコミュニケーションを通じて価値を伝えてくれたルミネシンガポールのスタッフのみなさんがとても大きな力となってくれました。

 

 

■自国にない数々の価値を持つ日本への憧れ

 

日本の生地がなぜ世界的な評価を得ているのか?その理由としてよく挙げられる要因のひとつに、日本の職人の繊細な感覚によるものづくりがあります。

これは手先が器用で緻密な手作業に長けている、という意味ももちろんありますが、もう一つには、日本人は手先の“皮膚の感覚”が繊細であることも特別な生地を生み出すことができる要因だと言われています。

つまり、微細な生地の質感・違いを感じ取った上で、持ち前の職人志向を活かし、これらの調整を重ねた繊細なものづくりができるわけです。

こうしたことはパリや台湾などでの出展の際にもお伝えしてきたことで、海外において特に共感いただける話題なのですが、今回もう一つ、現地でのコミュニケーションを通じて強く感じたのが、シンガポールの方々にとって「日本」という国とそのものづくりに対しての価値の感じ方が、私たちが思っている以上に強いということです。

先日もお伝えしたシンガポールメディア「THE PEAK」さんから取材をいただいた機会が、そのことを特に強く感じた瞬間でした。

 

近年急速に発展が進み、近代都市の象徴のように感じるシンガポールですが、マレーシアから独立したのは1965年です。国家としての歴史はまだまだ浅く、また東京23区ほどの大きさの国土のため、日本各地に見られるような多様な“地域性”や“風土”といったものは多くはありません。

加えて、日本ではどこの地域でも豊富に湧きでる“水”もシンガポールにない資源です。日本にあるような湧水や地下水、川や自然湖がほとんどなく、水資源の確保は建国以来の大きな課題であり、国内の貯水やマレーシアからの輸入水に頼ってきた歴史があります。

日本では多くの産業において発展の基には“水”があり、特に繊維業においては最も大切な資源であることから、国内の繊維産地には必ず大きな川が存在します。

国土の全土においてこれほど豊かな水資源に恵まれた国はありません。こうした環境資源のもとで、長い歴史をかけて地域ごとに特色ある産業が生まれ、発展しているわけです。

 

記者さんから取材いただいた際にひときわ質問の熱量が上がったのは「トヨタ」についての話題の時でした。

(久留女木の棚田・綿花栽培の様子)

(トヨタイムズより)

当時綿花の一大産地であった遠州生まれの豊田佐吉が日本初の自動織機を発明し、その技術が発展して現在のトヨタやスズキ、そしてホンダ、ヤマハ、カワイといった世界的な自動車や楽器メーカーにつながるわけですが、シンガポールにおいて誰もが知っている世界的なメーカーの基にある繊維業の技術が今なおこの遠州の地に残り、様々な海外メゾンに使われている世界的な高級アパレル生地を生み出す産地として息づいている。

そんな産業と歴史を知れば知るほど、底知れない興味が湧いてくるシンガポールの方々の気持ちはよくわかります。

日本のものづくりへの信頼。その背景には、自国にはない日本という国の環境資源や歴史への憧れがおそらく潜在的にあるのだと思います。

 

 

■身近すぎることで見過ごしてしまいがちな日本の豊かさ

 

海外へ出るたびに感じるのは、日本製と言われるものに興味が集まるのは「日本だから」評価されているのではなく、その背景にあるさまざまな価値が評価されているということです。だから、それをきちんと情報として伝えたときに届く、ということです。

遠州織物もまた、その歴史や技術を語らなければ、ただ一枚の生地という印象で終わってしまいます。だから私たちは、服をつくるだけでなく、その背景にある産地や職人の技術を伝え続けています。

 

日本に暮らしている私たちの身の回りは、豊かで特別なもので溢れています。でも身近すぎることで逆に、当たり前のものとして見過ごしてしまうものがたくさんあります。

素晴らしい資源と多様な地域産業を有する日本ならではの豊かさを、私たち日本人がもっともっと感じ、楽しみ、誇りに思えること。

そのためのきっかけを作ることは、きっと誰もができることです。

そして、その小さなたくさんのきっかけが、今残る産地の明るい未来につながるはずだと思っています。

 

 

(シンガポールでのPOPUPの様子は、HUIS YouTubeチャンネル「大人の服選びは産地から!」で後日、複数回に渡って詳しく配信される予定ですのでぜひご覧ください)

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