国内有数の資源である【久留女木の棚田】で綿花を栽培し、遠州織物の服作りを目指す「遠州織物×久留女木の棚田プロジェクト」。
収穫作業にご参加をいただいたみなさまのご協力などもいただき、今年栽培した綿花の収穫が順調に進んでいます。
このプロジェクトの具体的な流れなどは、ぜひ先日公開した以下の特設サイトをご覧ください。
■遠州織物×久留女木の棚田プロジェクト特設サイト
https://1-huis.com/kurumeki
(「遠州織物 久留女木」で検索)
収穫した綿花は、今後、紡績工場さんへとお送りして機織りの原料になる【糸】にしていただきます。
ただ、この紡績作業をおこなうためには、まず、綿花の中にある【種】を取り除く作業が必要となります。
大規模に綿花生産されている海外では、ジンニング機という自動で種取りをする機械で行うことが一般的ですが、国内で小規模に生産する綿花栽培では、こうした機械を手に入れることが難しいのが現状です。
そのため、綿花の種取りには、昔ながらの【綿繰り機(わたくりき)】という機械を使って作業することが一般的です。
この綿繰り機は、すべて手作業で行う作業になります。
収穫したひとつひとつの綿花を綿繰り機にかけ、手前に種が、奥にワタが、きれいに分かれていく様子は気持ちの良いものですが、実際に1つ1つ行うのは膨大な作業となります。
HUISの棚田プロジェクトに共感していただき、この丁寧な作業を請け負ってくれることになったのが、浜松市の三幸町で障がいのある方の就業支援を行う、障害者就業・生活支援センター「だんだん」さんです。
先日、この綿繰りの作業の様子を撮影させていただきました。
この綿繰り作業を担当してくれているのは、施設利用者の菅沼さん。手慣れた作業で種を取っていきます。
分離されたワタが集まると、綿花の状態の時よりも、美しい輝きが生まれるのが不思議なところ。
なお、最初にお届けした10リットル=約2kg分(小さなスーパーの袋2つ分ほど)の種取りをするのに、『約50時間』を要しました。
約2kgの綿花から種を取り除くと、約1kgの綿となります。
一般的に、紡績工場さんに糸にしてもらえる最低のロットは1t(1,000kg)と言われます。
1kg分の綿では、生地作りのための糸にはまだまだ程遠い量で、この1000倍の量が必要になるということは、つまり手作業による綿繰りの時間は50,000時間が必要になるということです。
生地作りの工程のたったひとつにも、いかに時間と手間がかかるかがよくわかります。
この後、集めたワタは紡績工場へと送ることになりますが、分離した種も大切に集め、来年また同じ棚田に蒔いて綿花を育てます。
こうした循環が生まれるのは、化学繊維とは異なる天然素材の良いところ。環境に負荷をかけることなく、持続可能な資源になるのです。
撮影の当日は、この農業×繊維業×福祉の新しい連携に注目をしていただいている「日本農業新聞」の記者さんも取材にお越しいただき、菅沼さんの作業の様子や、プロジェクトの理念などを詳しく聞き取っていかれました。
だんだんさんは、以前から地域の農業者さんたちと連携し、農作物の収穫や雑草取りなど、障がいのある方々の働き場づくりにも積極的に取り組まれて来た施設さんです。
障がいのある方の働き場づくりと、農業における人手不足の解消や経営改善につなげるこうした取り組みは、現在、“農福連携”と呼ばれ全国に広がってきていますが、ここ浜松市は全国に先駆け古くから農福連携の取り組みが進められて来た自治体としてよく知られています。
浜松市ではこの農福連携のことを、【ユニバーサル農業】と呼んでいますが、だんだんさんもその中心メンバーです。
ユニバーサル農業におけるだんだんさんの取り組みについては、下記の浜松市のHPをぜひご覧ください。
■はままつのユニバーサル農業「だんだん」
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/sangyo/shinko/nogyo/nogyo/univagri/dandan.html
こうした先進的な取り組みが進む浜松市において、「農業」と同じく伝統的な地域産業である「繊維業=遠州織物」が連携に加わることで、両者の新たな未来を拓くきっかけになると私たちは考えています。
農業×繊維業×福祉が生み出す新たな価値に向けて、HUISの久留女木の棚田プロジェクトをひきつづき、楽しく進めていきたいと思います。
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高品質な“遠州織物”を使用したシンプルな衣服。
ふくふくとした豊かな生地の風合いを大切に。
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