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お知らせ 2024-06-03

“糸編・宮浦さんの寄稿文【日本の生地が世界で評価されるわけ】”

宮浦晋哉さんが「日本の素材の魅力」をテーマに繊研新聞に寄稿された文章をご紹介します。

宮浦さんとは、6/8(土)18:00〜東京蔵前「透明書店」さんにてアパレルビジネスに焦点を当てたトークイベントも開催予定です。こちらもぜひご参加ください。
@tomei_1111
@shinyamiyaura

 

【日本の生地が世界で評価されるわけ】
全国の繊維産地を回り始めてもう12年になります。ファッションを追いかけ、留学したロンドンで衝撃を受けた日本の素材への高い評価が理由です。コロナ下を除き、年間200軒以上の工場を訪問し、国内外の国際見本市もウォッチしてきました。自らの経験を踏まえ、日本の素材の優れた面と課題についてつづります。

○誰も言及しない
繊維産地へ強く興味を持った最大の理由は、日本で服飾を勉強してきた服好きの日本人にもかかわらず、国内産地のことを全く知らなかったからです。自分なりに、アカデミックにも、現場に近いストリート感覚としてもファッションの勉強したにもかかわらず、です。

振り返ると、当時はそのくらい日本の産地情報が世に出ていなかったことの裏返しだったのだと思います。大学の授業でも日本のテキスタイルが世界中で評価されていることは話題になることもありませんでした。もちろん取引先との契約があり、受託側が情報をオープンにできない背景も関係しています。

そこから少しずつ時代が変わります。LVMHグループが日本の産地企業のパートナーシップ契約を結んだり、エルメスが公式「ユーチューブ」チャンネルで京都のとある工房との取り組み動画を公開したり。その動画は、全動画の中で2番目の再生数です。

世界のファッション企業やブランドが日本の素材を高く評価しているのが分かりました。ではなぜ、日本の素材が特別に評価されているのか。22年からこのテーマでリサーチを始めました。

まず各国で開かれる国際見本市に足を運び、定点観測することにしました。特に注目したのが、パリで開かれる世界最高峰の素材展「プルミエール・ヴィジョン」。中でも、春夏シーズンのみに立ち上がる「メゾン・デクセプション」に注目しました。

ラグジュアリーブランドをはじめ、招待者のみが入場許可されるクローズドなブースで、担当ディレクターのお眼鏡にかなった希少価値の高い職人技術が並ぶ特区エリアとして11年に開設されたものです。

年に1度の開催に向けて、厳しい審査を通過した企業のみが出展する特別な場所ですが、24年2月の春夏展では5カ国から20企業の出展社が集まり、そのうち日本から5社の企業が選出されていました。国際見本市を定点観測しているだけでも、日本独自の「素材力」の輪郭が見えてきます。

○求められる職人技
次に、実際に日本の素材を仕入れている各国のファッション企業の仕入れ担当者やデザイナーに、「日本の素材の魅力」についてインタビューしました。国際見本市の取材とあわせ、インタビュー結果から簡易図を作成しました。ポイントは三つあります。

一つ目が、日本「企業」への高い信頼感です。この信頼感を作ってきた背景にあるのが、長年にわたって担保してきた納期と品質です。当たり前のことをコツコツ積み重ねてきた結果、最大の強みになりました。二つ目は、生地と並んで輸出額が大きい「糸開発」の力です。日本国内には、生地だけでなくハイテク糸を開発してきた川上企業の力があります。また、そんな開発糸と天然素材とを組み合わせた独自のテクスチャーもファンが多い。

三つ目は、「ローテク」の極みです。日本ならではのシャトル織機やつり編み機などから生み出す風合いを求めるデザイナーは多数います。旧式の機械をメンテナンスしながら稼働し続けてきたこと、使いこなす現役の職人が多数いること、どちらも彼らを驚かせるポイントです。

前述したエルメスの動画でも描かれていますが、彼らはこのようなクラフトマンシップを日本の工場に求めているのです。日本のような遠い島国から糸や生地を仕入れ続けるわけですから、具体的な評価理由が返ってくることがインタビューを通して印象的でした。

 

 

 

○未来へつなげる
ただ、決して手放しで喜べることではありません。先人たちが数十年かけて作ってきた信頼も、未来の行動いかんでは評価がひっくり返ることもあります。また、日本の素材を高く評価し、最大限に生かしているブランドが海外に偏り気味なのも心配なところ。もっと国内のデザイナーたちにも全国の産地に足を運んでもらい、素材の価値を理解して欲しい。さらに自らのコレクションで世界に発信し続けることで、未来につながる日本の産地との関係を築いてほしいというそんな願いとともに今回の寄稿を締めます。

■透明書店 『HUIS.の服づくり』刊行記念 「愛され続けるアパレルブランドのつくり方」
日時 6月8日(土) 18:00-19:30
住所 台東区寿3丁目13−14 1F
https://huis-tomeibookstore.peatix.com/

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高品質な“遠州織物”を使用したシンプルな衣服。
ふくふくとした豊かな生地の風合いを大切に。
HUISweb | www.1-huis.com
HUISonlinestore | https://1-huis.stores.jp
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