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【生地のコト、産地のコト】 2022-06-12

【生地のコト、産地のコト】vol.7 織機の種類

生地のコト、産地のコトを少し掘りさげ、わかりやすく解説させていただく“生地のコト、産地のコト”シリーズ、第5、6回目では身近な織物の生地の種類についてお話ししました。第7回目では、そうした生地を織る機械「織機(しょっき)」についてお話しします。

織物はタテ糸にヨコ糸を交差させることで生地になるのでしたね。この作業を行う機械を織機(しょっき)といいます。「しょっき」という名称は聞きなれないため、初めて聞いた方は「食器?」なんて思われてしまいがちですが、織り機=織機のことです。

織機にはヨコ糸を通すためのシャトル(杼・ひ)がある「有杼織機」と、シャトルを使わない「無杼織機」があります。主な4つの織機についてご紹介していきます。

まずは、HUISではお馴染みの「シャトル織機」。

HUISのほとんどの商品の生地はシャトル織機で織られています。シャトル織機は、唯一の「有杼織機」です。「シャトル」とはヨコ糸を左右に動かす部品のことであり、手織り機にも用いられるものです。
シャトル織機は簡単に言えば、このシャトルを自動で往復させることで生地を織っていく機械です。

遠州生まれの豊田佐吉(トヨタグループ創始者)は、当時、手織りで動かしていたシャトル織機を自動で動かすことができる「自動織機」を日本で初めて発明しました。HUISの生地を織っているシャトル機械は、こうした当時の古い織機を使っているもの、というわけです。

ですので、織られた生地も手織りで織った生地の風合いに近いです。機械と言ってもスイッチを押せば勝手に織っていってくれる訳ではなく、糸の太さや状態、織機の具合や、さらにはその日の気温・湿度などに合わせて多くの微調整が必要になり、常に熟練した職人さんが見張っている必要があります。

「シャトル織機」自体は現在生産されていないため、残っている当時のものを使うしかありません。

HUISの生地を織ってもらっている機屋さんでは、50-60年前に造られたシャトル織機を大切にメンテナンスしながら使い続けていて、今稼働しているものが動かなくなってしまえば手に入れることができない貴重な機械です。他にご紹介するどの織機よりもヨコ糸が進むのに時間がかかるため、1日に織ることの出来る生地量は限られますが、さまざまな機能性を持ち、ふっくらとした風合いの特別な生地が織り上がります。

 

続いて「レピア織機」。

レピア織機は、織機の両側から“剣”のような形の「レピア」と呼ばれる部品を挿入し、片側のレピアがヨコ糸を掴み中央まで運び、もう片側のレピアがその糸を受取り生地の端まで持っていく作業を繰り返しながら糸を織り込んでいく無杼織機です。レピア織機は糸が往復することがなく、糸が飛ぶ方向は一方通行です。

大きな「シャトル」がタテ糸の間を往復するのは、どれだけ回転数を上げたとしてもスピードに限界があり、効率よく生地を生産することができないことが当時の大きな課題でした。そうした中で開発されたのが無杼織機であるレピア織機です。並んだタテ糸の右側と左側から同時に出るレピアが糸を運ぶことで、生地生産のスピードを大きくアップすることができるようになりました。繊維業界の革新ともいえる瞬間です。

レピア織機は、シャトル織機に比べ高速で織ることができ、糸色数も多く使うことができます。

なお、HUISで使用しているブロックチェックのアイテムは、このレピア織機の中でも旧式のものを使い、あえて低速回転させることでシャトル織機に近い風合いを生み出しています。

 

最後にご紹介するのは、水の噴射によりヨコ糸を運ぶ「ウォータージェット織機」と、空気の噴射によりヨコ糸を運ぶ「エアージェット織機」。これらが現代において、主流となっている“超高速型”の織機です。

レピア織機では、織機の左右から出るレピアが糸を運ぶ必要がありましたが、ウォータージェット・エアージェットは、ヨコ糸を飛ばす運搬物自体に形がないため、生地を織るスピードを飛躍的に高めることができるようになりました。まさに大量生産に適した織機です。

ウォータージェット織機は水を吸う天然繊維には使用されず、合成繊維に使用されます。エアージェット織機では毛羽の少ない長繊維の糸は飛びにくく、主に綿などの天然繊維に使用されています。いずれも年々効率的で生産性の高い織機が開発されています。

こうしてご覧いただくと、各織機にはそれぞれ強み、弱みがあることがわかりますね。
ちなみに、“シャトルバス”や“スペースシャトル”など、シャトルを由来とする言葉がいくつかあったりします。これらはシャトルがタテ糸の間を何度も往復することから、シャトル=往復する、という意味をもつようになったわけです。“スペースシャトル”という言葉には、宇宙に旅立った宇宙船が安全に地球に帰ってくる、という意味が込められていたんですね。

織物については一旦今回で終わり、次回は編物について詳しくお話ししていきたいと思います。

 

【生地のコト、産地のコト】シリーズは、以下からご覧いただけます↓↓

vol.1 繊維のコト
vol.2 繊維から糸へ
vol.3 糸から生地へ
vol.4 織物の三原組織
vol.5 平織生地の種類
vol.6 綾織・朱子織
vol.7 織機の種類
vol.8 編み物のコト

 

■HUIS web blog【生地のコト、産地のコト】
https://bit.ly/35AiXF4

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高品質な“遠州織物”を使用したシンプルな衣服。
ふくふくとした豊かな生地の風合いを大切に。
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